第2話

――高野京たかのけい――

「ふわぁ~~もう朝か」

昨日は興奮のあまりよく眠れなかった。

かといって寝不足気味かと聞かれれば体調は左程変わらないと答える。

「この一年間のおかげで一日ぐらいの徹夜なんてへっちゃらになったもんな」


部屋を出て階段を降り、自分の朝ご飯を作ろうとリビングに入ると

机の上にはもうすでに用意されていた。


「お母さん朝ご飯ありがとう」

「いいのよそれぐらい。それより今日、ダンジョンに行くんでしょ?」

「うん。東京本部のG級ゲートに行こうと思ってる」


しっかりとダンジョンが浸透した世の中。

どれだけ興味がなかろうと「東京本部のG級ゲート」と言われればすぐに場所が出てくる。

それだけダンジョンが社会に及ぼしている影響が大きいのだろう。


「...ほんとお父さんとそっくりね」

「ん?お母さん何か言った~?」

「気を付けて行きなさいって言ったのよ」


お母さん少し変だな..?と思いつつも気にせずこれから向かうダンジョン協会の近くにあるG級ゲート「縁力えんりょくの草原」に向けて情報を集めつつ、

作ってくれた朝ご飯を完食した。


「お母さん行ってきま~す!」

「夕飯までには帰ってくるのよ~!」

「は~い!」


しっかりと装備を身に着け、東京ダンジョン本部行のバスに乗り込む。


「どんなスキルを授かるのか楽しみだな」


そんな期待を胸に本部行のバスは走り出した。




――高野紗枝たかのさえ――

あの子はお父さんと同じ選択を選んだ。

私は止めたかったが、日を重ねるごとに強くなるダンジョンへの思いを感じてしまい。

ついにはあんな約束までしてしまった。

そして今日、あの子はダンジョンへと向かった。


「あなた...けいのこと見守ってあげてください...」


そして後に苦しむ我が子の顔を見る日々が続き何故あの時止めなかったのかと

なぜあんな約束事をしてしまったのかと後悔する日々が訪れることになる。


その日を境に、京の笑顔が少しずつ消えていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る