第17話

――高野京たかのけい――


「ランクアップ申請お願いします」


そう言いながら冒険者カードとG級ゴブリンライダーの魔石を提出する。


「はい!かしこまりました!少々お待ちください」


5番の紙を受け取る。

魔石の鑑定とF級の魔力印を押すなど色々するため少し時間を取られるようだ。


受付から近い場所にある椅子に座り、呼ばれるのを待っていると知らない冒険者に話しかけられる。

ただ、見た感じ普通のお話じゃなさそうだと察する。


「おいおいおい、荷物持ちがここで何してんだよ」


僕と同い年ぐらいだろうか。

初心者装備を着ている3人組が絡んでくる。

しかし、話したことも無い人に対して荷物持ちって。

悪い意味で僕の噂は広まっているんだろうな。

全くもってうれしくない。


一応、同い年のような気もするが敬語は使っておこう。


「ランクアップ申請待ちしてるんですよ」

「な!?嘘をつくなよ!!」


相手が大声で叫ぶせいで周りの冒険者が何かとこちらを見てくる。


「嘘じゃないですよ」

「お前みたいな荷物持ちがランクアップできるわけないだろ!」

「そうだそうだ!」

「何か裏があるに違いないわ!」


何故そこまで声を大にして突っかかってくるかは分からない。

早く受付嬢さん戻ってこないかな。


「あ~分かったぜ。お前、媚売りまくってゴブリンライダーの魔石を譲って貰ったんだろ!」

「......」


こいつは何を言っているんだろ。

そんなことでランクを上げたとしても死ぬリスクが増えるだけなことに気づかないのかな。


周りの冒険者も僕のことを汚物を見る目で見てくる。

もしこいつが言ってることが本当なのであれば他の冒険者から冷たい視線を送られるのは分かる。

一生懸命に魔物と戦い、自力で魔石を得る冒険者からすれば面白くないだろう。


「こいつ図星突かれて黙ってるぜ」

「ダサいな」

「ダッサ~」


少しイライラしてくるな。

特に後ろで便乗している二人。


「俺達はな、一年間荷物持ちしてるお前と違ってスキルも持ってて1か月でボス部屋まで辿り着いてんだよ!」

「......」

「そんなやり方でしかランクアップできないなら冒険者をやめろよ!!」


周りで見ていた冒険者も「そうだそうだ!」と声を上げ、便乗してくる。


ただ、この馬鹿騒ぎを聞きつけたのか思わぬ大物が奥から声を上げる。


「おい、何を騒いでいる」


奥から顔を出したのはダンジョン協会東京本部の本部長である葛城 岱かつらぎ だいだった。

本部長である葛城 岱は、かつてダンジョンの外に魔物が出てきた際に魔物を倒しまくっており、その姿を見た市民からは、魔物と魔物が戦っていたと言われるほどの暴れっぷりだったという。


騒いでいた冒険者たちは、葛城 岱のことを見ると一瞬で静まる。

体から溢れ出ている強者特有の圧が周りの冒険者を黙らしているのだろう。


確かに、物凄く強い圧だった。

そしてこの圧を体に受けて思ったことがある。

デュラハンの圧の方が強く濃密で桁違いだったと。


「おい、何を騒いでいる。そこの君たちが起こした騒ぎか?」


目の前にいる三人組は、葛城本部長に対してビビってはいたものの自分達は間違っていないと思い込んでおり、僕の方を指さし説明を始める。


事の発端を知った葛城本部長は、黙っていた僕に話を振る。


「どうなんだ?少年」


大事にしたくなかったんだけどな。

だけど、こんなことのせいで冒険者カードを剝奪なんてなったら嫌だし、ちゃんと答えるか。


「自力で倒したゴブリンライダーの魔石を提出しただけです」


そう答えると目の前の三人組が騒ぎ出すが葛城本部長に黙らされる。


「それを証明する方法は?」


もう一度、取りに行ってもいいが僕の実力をあまり知られたくないし時間がもったいない。

なので、口でうまく解決へ持っていけないか試す。


「ありませんね」

「ふむ、だが、このままでは君が悪となり冒険者カードが剥奪されてしまうかもしれないぞ?」

「なら、逆にその三人組に聞いてみてくださいよ。あの魔石が僕のでない証拠を」

「それもそうだな。何か証拠があり、こんな騒ぎを起こしたんだよな?君たち」

「ぐっ」


証拠なんてものがあるわけがなかった。

何せ、こいつは全て決めつけで話していたのだから。


その後、「あいつは一年間荷物持ちで」や「荷物持ちじゃ勝てない」だとかを発言するが証拠にはならず、葛城本部長は三人組の口から出る言葉に呆れ、冷めた目を向ける。


「そんなものは証拠にはならん。お前らもしょうもないことで騒ぐな。解散しろ」


最後の一言で本部に用事がない冒険者達は、外へ出ていく。

そして僕は、三人組に睨まれながら受付嬢の所まで行き、魔力印を押してもらう。


本部長が最後まで僕に視線を向けていたのは、何かの勘違いだと信じたい。




「はぁ、酷い目に合ったな」


まさか、ランクアップ申請で絡まれることなんて想定していなかった。

そして、葛城本部長が出てくるのなんて誰が分かっただろう。

ドッと疲れたため、今日はご飯と風呂を済ませてベッドに入る。


ベッドに身を委ねると一気に夢へと旅立つ。

そしてその日の夢にデュラハンが出てきたことは朝の僕は忘れていた。






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どうも、璃々宮志郎りりみやしろうです。

「努力の形」歩みを止めるのは俺次第をお読みいただきありがとうございます。

良ければを頂ければ、励みになりますので

気軽によろしくお願いいたします。


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