第21話
――
もう躊躇わない。
俺が生き残るために。
こいつを殺す。
「....いい顔ですね。私はまだ、全力で相手をしていません。それでもまだ笑えますか?」
笑う?
誰が?
自身の顔に手を当てる。
気付かないうちに口角が上がっており、笑っていた。
命を懸けた戦いを俺は、楽しいと感じているのかもしれない。
「...無自覚でしたか。こんな殺し合いで笑顔になれる少年はやはり危険ですね。私の主のために死んでください」
黒装束の女性がこちらに何かを投げつけてくる。
「【ラビットフット】」
使いすぎで足が痛むがそれでも使用しないと相手の速さにはついていけない。
足が使い物にならなくなる前に決着をつけないと。
飛んでくる投擲物を避けながら女性に近づく。
短剣は囮に使い、フェイントを入れ敵を翻弄する。
が、やはり、体術など習ったことも無いので軽々と避けられてしまう。
「何もかもがちぐはぐですね」
そう言いながら彼女は、蹴りを入れようとする。
そして俺はその動作を待ってたと言わんばかりに足を掴み、離さない。
「逃がさねーよ。【酸】」
彼女の軽々と彼女の着ている服を溶かしていく。
「!?シッ!!」
もう一方の足で腕を蹴り上げられ足から手を離してしまう。
が、みすみす逃がすわけもなく。
「【酸球】」
頭に思い浮かんだ文字を言葉にする。
手のひらに現れたのでピンポン玉サイズではなく、野球ボールサイズの酸の球が出来上がる。
それを彼女に向けて飛ばす。
それと同時に俺も走り出し、彼女の元へと駆ける。
酸の球を完璧によけれなかった彼女は、左腕にかすってしまう。
ただ、かすっただけだが、表面の皮膚を溶かしていく。
「くッ!」
そこに追い打ちと言わんばかりに短剣を投げつける。
短剣は軽々と弾かれるが懐に入りこめた。
「死ね【酸撃】!!」
そうして酸撃が決まった。
胴体を殴り続け、彼女のお腹に穴を空けた。
地面に倒れ、目の前にいた彼女は息絶えた。
「....顔を一応確認しておくか」
彼女が何者なのかは少しでも知っておく必要があった。
フードをめくろうとした時、喉に痛みが走った。
そして、自分の首の中心から伸びている刃には、血が付着していた。
「残念でしたね。目の前のそれは私の【影分身】ですよ」
刃が思いっきり抜かれ痛みで地面に倒れる。
息ができない。
次第に意識が遠のいていく。
まだ死んでおらず、解除もしていないのに、【デュラハンの鎧】が強制解除される。
(あぁ、死ぬのか)
彼女はまだ何か話してはいるが、何も聞き取れない。
指先の感覚もすっかり消え、体に冷たさを感じる。
そしてまだ目は開いているはずなのに視点は黒に染まる。
風が強く吹いている気がするが、気のせいだろう。
(このまま終わるんだ)
(何故、殺されなきゃいけないんだ)
(俺がなにしたってんだ)
(ただ、夢を、見ていただけなのに)
目から涙がこぼれた気がする。
(強く...なりたかったなぁ)
そう思ったが最後、力が抜け、意識を失った。
――黒装束の女性――
彼は息絶えた。
首から血が溢れ、息もできていないはず。
キラリと目からこぼれているのは涙だろう。
涙が流れた瞬間に少年が身に着けていた漆黒の鎧は黒い霧へと変わった。
「....これは装備というよりスキルと言った感じですね」
使用者が死ねば装備は消える。
主のために持ち帰ろうと思っていたが、それはできそうもない。
少年の目からハイライトが消えた。
遺体を回収し、どのように処理をしようと考えているとある異変に気付く。
「.....いつまで少年に纏わりつくのかしら。この黒い霧」
黒い霧が一向に消えないのだ。
黒い霧を無視して、少年の腕を引っ張り上げようとする。
だが、私が取った行動はバックステップだった。
「!?」
体からは気持ちが悪いほど汗が流れていく。
バックステップをした後、死んだはずの少年の口が動く。
私は、声が出せない状況でも仲間とやり取りができるようにと読唇術をマスターしている。
だから少年が声の出ない口で何を発したかがしっかりと読み取れた。
ゆっくりと口にした言葉。
それは――
【デュラハン】
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どうも、
「努力の形」歩みを止めるのは俺次第をお読みいただきありがとうございます。
良ければ星の評価とコメントを頂ければ、励みになりますので
気軽によろしくお願いいたします。
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