第10話

――高野京たかのけい――

獲得した装備や魔石を奪われ目を覚ました後、一度気持ちを落ち着かせてから帰宅した。

そしてその翌日、学校に行くことは無くG級ゲートへと向かう。

お母さんには高校に行くふりをして家を出ている。

悲しませたくないからね。


なので服装やカバンはいつもと違うが装備はカバンに詰めてあるので

G級ゲートの周りにあるプレハブで着替えてから入ることにした。


ゲートにはすんなり入ることができた。

てっきり「学校は?」などと問いを投げかけられるかと思いはしたがそんなことは無かった。


ノルマで提出するはずだった魔石は奪われてしまったので2階層に降りる前に1階層で5個魔石を集める。


目の前にグレーウルフが現れるが昨日の京とは心構えが違い見つけた瞬間に剣を抜きながら走り込み、2匹のグレーウルフへと酸を垂らした指を振るう。

グレーウルフ達は酸を避けるために左右に分かれる。


すでに左には京が走り込んでおり、1対1の構図が簡単に出来上がる。


「もう容赦はしない」


目の前にいるグレーウルフに向けてもう一度、酸を垂らした指を振るう。

見事に酸はグレーウルフの目に当たり、痛みでもがいているところに剣を振るい胴体を深く斬りつける。


もう一匹のグレーウルフはすでに京の後ろまで来ており、噛みつかれるのは時間の問題だったが。


「うぉぉおおお!!」


京の【咆哮】により少し怯んでしまうグレーウルフ。

その隙にグレーウルフの首に一突き。


しっかりとスキルを使い、素早く仕留めることに成功した。


二匹のグレーウルフは霧になり消えた。

魔石を拾おうとしたが、更に二匹のグレーウルフが茂みから近づいてきていた。


「「グルルルルルルル」」

「僕の大声を聞きつけてきたのか」


自分なりに剣を構え、グレーウルフ二匹に対して笑みを浮かべる。


「こいよッ」

「「グルルルルル!!!」」


その後、同じような感じで二匹のグレーウルフを素早く倒し、ドロップ品である計4個の魔石を拾いカバンに詰める。

尚、戦闘中にカバンを持っていると邪魔になるので地面に置いて戦っている。


ふとステータスを確認するとレベルが上がっていた。


・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


高野京 Lv,31UP

MP: 105UP

筋力:104UP

防力:74UP

敏捷:115UP

魔力:52UP

精神力:100


スキル:酸lv21UP・咆哮

固有アビリティ:「努力の形」


・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


ステータスがいい感じに成長していて嬉しくはあったが、装備による補正値が掛かっていないのを見ると、奪われた装備のことを思い出し、悔しさと怒りの気持ちが沸いてくる。

湧き上がってきた気持ちを心の奥に仕舞い込み、ふとスキルを見てみると【酸】のレベルが一つ上がっていたので、何が変わったかを確かめているとピンポン玉程度の酸の球を浮かばせることができた。

これに関してはまだ、手のひらからしか発生させることはできないが、レベルが上がれば自分の周囲に展開できるような気がする。

そして酸の球を作るのにMPを消費してしまうことが分かった。


今まで【酸】を使用する際は、MPを消費されることがなかったので無限に出せるのではと考えていたが現実はそんなに甘くなかった。


「今の俺じゃ5発が限界か」


ピンポン玉サイズ1個につきMPは2消費するようだ。

ただ、手のひらに出す速さや飛んでいくスピードは中々に速く、実戦で使用できるレベルのものだった。

レベル的な問題なのか慣れからくるものなのかは分からないが今は、直線的にしか飛ばすことができず、曲げたりUターンさせることができないのであまり応用は利かない。


その後、一匹のグレーウルフと出会い、走り込んでくるグレーウルフに酸の球を当ててやると胴体に直撃。

貫通はしなかったが表面の皮膚が溶け、穴が開き、血を出しすぎたグレーウルフは戦闘中に倒れ、魔石を残し消えた。


「...これ人間に向けては撃てないな」


最悪の時以外は、人に対して使うことをやめることにした。

ただ、【酸】のスキルレベルに関しては、優先的に使用して上げるつもりだった。

自分の命が人によって脅かされる場合に、このスキルは必要だ。

なので今後も【酸】を使った新しい戦闘方法を模索しようと思う。


(【酸】だけを頼りにするわけではないけどね)


「さて、魔石も5個集めれたし、二階層に降りるか」


昨日よりも気合を入れ、誰にも負けない強さを手に入れるために、今日も2階層への階段を降りていく。





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