第5話
――
「....知らない天井だ」
と言ってみたものの脳に焼き付いた痛みと恐怖が消えることはなかった。
全ては夢であってほしかった。
「...ステータスオープン」
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高野京 Lv,1
MP: 1
筋力:1
防力:1
敏捷:1
魔力:1
精神力:20
スキル:
固有アビリティ:
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前回のダンジョンから代わり映えのしないステータスが少年の目の前にはあった。
「そうですね。もう退院していただいて結構ですよ。幸いなことに怪我を負ってしまったときの対処が良かったのでしょう。もし、ポーションを使ってもらえていなかった場合は、腕に後遺症が残り、不自由になっていた可能性がありましたが、もう完治しているので。」
「そうですか。分かりました。ちなみに――」
その後、治療していただいた方について聞いてみたところ、同い年ぐらいの冒険者ぐらいの情報しか得られなかった。探してお礼をしようとも考えたが如何せん東京本部には冒険者が多くすぐに見つかる保証はなかった。
(それに....今後どうすればいいんだろうか。ステータスは悲惨だった。冒険者は諦めていっそのこと一般企業に)
帰り道、涙があふれた。
あんなにも憧れていた夢が現実になったときこんなに脆く壊れていくものなのかと。
(こんなことで諦めてたまるか。やっと冒険者になれたんだ。必ずスキルを獲得してやる!)
その決意を胸に1年が経った。
そして今、僕は高校の保健室で目を覚ました。
「....知ってる天井だ」
京は、山中に殴られ保健室で目を覚ます。
これが日常化している京にとっては、ここで目を覚ますことが当たり前になってきているのだ。
(これで何回目なんだろう)
入学式から半年が経ったある日、屋上でいじめられている同じクラスの水瀬さんを見かけてしまった。後ろから見ていた山中を含む男子生徒2名からは下卑た笑みを浮かべ、残りの女子生徒2名は、殴る蹴るの暴行を笑いながら続けていた。見ていられなくなった僕は、助けに入った。
結果、その場で山中にボコボコにはされたが、水瀬さんを助けることができた。
が、その日から山中に目を付けられいじめの標的が僕へと変わった。
以前は休み時間中に話していた友人もプリントを回す際に「今日も眠たそうだね」と軽く話しかけてくれた子との関係も変わってしまった。
そこまでなら何とか我慢できていたのだがその数日後、放課後の教室で言われた言葉が心を奥底をえぐった。
「?どうしたの、水瀬さん」
「助けられたなんて、思ってないから」
「....え?」
初め、何を言われたのか理解ができず固まってしまった。
「変な正義感で、私のこと助けた気になってほんと気持ち悪い」
「...」
「今後、私に関わらないで。それだけだから。じゃあね」
ポキッ
何か折れてはいけないものが折れた気がした。
嫌なことがあろうともどれだけ現実が酷かろうとも折れなかった物が
今、折れてしまった気がした。
その日から僕は、山中に反抗することをやめた。
(なんであんな馬鹿なことしてしまったんだろ)
「高野、起きたか」
「...先生」
「そろそろいい加減親御さんに相談したらどうだ。山中の行動は目に余る。それに」
「それに他の先生方に言えば何とかなるかもしれない、ですか?変わらないことは早見先生が一番知っているじゃないですか」
そう、この現状をしっかりとみてくれる先生は保健室にいる早見先生ただ一人。
その他は、いじめられている現状を知ってはいるが先生でさえも山中には、
関わりたくないのか距離をとっている。
そしてお母さんには冒険者に関しての悩みやいじめについても話せないでいた。
「だから、大丈夫です先生。僕はもう慣れましたから。いつもありがとうございます」
そう言って保健室を後にする。
家に帰宅した後はすぐに準備をしてバスに乗り込む。
当然行先はG級ゲート:縁力の草原だ。
今日も僕は、荷物持ちとしてダンジョンに入りおこぼれ(魔石)をもらう。
冒険者は、規則として月一で一個依頼を達成するか、月一で5個程魔石をダンジョン協会に渡さなければいけない。この二つのどちらかをしない場合は、冒険者カードの機能が停止し、活動ができなくなってしまう。
再度申請するには金がかかり、その申請費10万円を今の京では払えるわけがないのだ。なので、自力で魔物を倒せない京にとっては、誰かの荷物持ちする代わりに魔石をもらう行動をとるしかなかったのだ。
「ほらよ、高野これが欲しかったんだろ?」
そう言いながらら、スライムの魔石を地面に落とす彼はF級冒険者の
そしてその魔石を僕が拾おうとすれば決まって彼は言う。
「おい、それ拾う前にすることがあるだろ?」
汚い笑みを浮かべる渡部はこうやって荷物持ちの僕に土下座と感謝の言葉を求めてくるのだ。逆らう仕草をを少しでも見せれば魔石を渡してもらえなくなり今月のノルマを達成できなくなってしまう。
初めは受け入れがたい行為だった土下座も今では何の感情も湧き上がることなく実行することができる。今日は二人っきりの探索だったが、時には複数人の前で土下座を要求される場合もある。
「もっと地べたに頭を擦り付けろよッ!」
「ッ!...すいません」
慣れたといっても頭を踏まれ地面に額を擦り付けさせられるこの痛みには、半年経っていたと慣れることはなかった。
「荷物持ち、お前はほんと無様だな」
そう言い残し渡部はゲートから地上に戻って行った。
「はぁ、これで今月のノルマはどうにかなりそうだな」
額からは少し血が垂れてきており、事前に持ってきていたタオルで額を抑える。
これだけのことをされながらも冒険者を続けていた京にも考えがあった。
「ステータスオープン」
・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━
高野京 Lv,1
MP: 1
筋力:1
防力:1
敏捷:1
魔力:1
精神力:20→100
スキル:
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そう京のステータスには大きな異変が起きていたからなのだ。
ここ半年で京の精神力だけが変動している。
この変化は、京が屋上で水瀬さんを助け、ボコボコにされた日から侮辱行為をされるごとに精神力が1上昇していたのだ。
だが、精神力が上がったとて魔物を倒すことはできなかった。
精神力が上がったおかげでG級の魔物からの圧を感じてもビビることは無くなった。
山中や渡部にされる暴力行為なども痛みはあれど恐怖心を覚えることは50を超えたあたりから感じなくなっていた。
そして今日、精神力が100になり精神力だけで言えばD級~C級の領域に足を踏み入れていた。
(何だか変な達成感があるなぁ)
そう思いつつ、ステータスを閉じようとした時、一番下の欄に変化が訪れていたことに気が付く。
固有アビリティ:「努力の形」
「......へ?」
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どうも、璃々宮志郎です。
「努力の形」歩みを止めるのは俺次第をお読みいただきありがとうございます。
良ければ星の評価とコメントを頂ければ、励みになりますので
気軽によろしくお願いいたします。
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