第8話

――高野京たかのけい――

朝になると前日の疲れはしっかり取れており、朝食もぺろりと平らげた。

ただ少し物足りないように感じたが、お腹を壊すわけにもいかないということで我慢した。


出かける前に、スライムの魔石をプレートに取り込ませランダムドロップを選ぶ。

目の前に現れたのは淡い水の色をした指輪だった。


「!?...えっスライムの指輪じゃん」


まさかの激レアドロップが出たことに大声を上げそうになるが、今は朝の8時であり

ご近所トラブルを引き起こすわけにはいかないので我慢した。


大体10万円程度で販売されており、アクセサリー系の装備にしては安いほうだったが、詳しく調べると効果は、魔力と防力を+2。

初心者からすればこの+2は大きいだろう。

ありがたく人差し指にはめると大きさが変わりぴったりサイズへと変わった。


ステータスを確認すると...


・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


高野京 Lv,21UP

MP: 54UP

筋力:63UP

防力:32UP(+2)

敏捷:63UP

魔力:32UP(+2)

精神力:100


スキル:酸lv1・咆哮

固有アビリティ:「努力の形」


・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


しっかりとスライムの指あの効果が反映されているのを確認した。

そしてまさかのレベルが上がていたのだ。


「昨日、最後にグレーウルフ倒したときに上がっていたのか?」


今後もモンスターを倒せば順調にステータスは上がっていきそうだが、

元のステータスが低いせいでまだ喜んではいられない。


(もっと強くなりたい)


そう思いながら今日もゲートに向かうため家を出てバスに乗り込む。


今日は日曜日なだけあっていつも以上に冒険者が多いように感じた。


「よっしゃ~!今日こそはボスに挑んでF級に昇格しようぜ!」

と意気込んでいるパーティーもいればうまくいっていないのか表情が暗いパーティーもいる。やはりG級とはいえ、ボスは手強いのだろう。


「今日は2階層まで目指そう」

今日の目標を決め、ゲートに入る。


Dフォンには、G級ゲートのMAPが特典として元から入っておりF級ゲート以降のMAPはDフォンで購入しないといけない。MAPに関しては、未知のダンジョンでない限り大体は売られており、値段は階級によって変わるがF級のMAPは5000円とG級ゲートで稼げる金額となっている。


MAPに表示されている2階層へ繋がる階段へと一直線に進み続けること10分。

目の前にはスライムが2体、遠回りしてもいいがスライム相手に手こずることもないのでサクッと片付けることにする。


「【酸】。ふんッ!」


スライムへの対処は意外にも酸が有効で酸で表面を溶かし核を突くだけ。

それだけでスライムは霧となって消える。


二体に対して酸を振りまいたが1体は酸を逃れ、消えた仲間を見た瞬間に逃亡を図ろうとする。


「逃がすわけないじゃん」


スライムの前に先回りした僕は、もう一度酸を飛ばし、溶けた表面から露出した核めがけてアイアンソードで一突き。


最後のスライムは魔石とスライムゼリーをドロップ品として残し、消えた。


スライムゼリーは傷口に塗ると痛みがほんの少し和らぐ効果があり戦闘終わりに塗っている冒険者は多い。需要がしっかりとあるので500円程度で売れる。

持ってきていたビニール袋の中に詰め、2階層への階段へと向かう。


向かっている途中でステータスを確認したが流石にレベルアップはしていなかった。

そうこうしているうちに階段へと辿り着き、そのまま降りていく。

降りていくとそこは先程の綺麗な草原とは違い少し草木が汚れているように感じる。


荷物持ちとして2階層に降りてきたことはあるが実際自分が探索をする側として降りてきたことはないため、多少の緊張感を覚えながら魔物を探す。


G級ゲート:縁力の草原の2階層で出る魔物は、ゴブリン、ホーンラビット、グレーウルフの3体だ。ちなみに1階層はスライムとグレーウルフしか出ないのでステータスが平均値程度ある初心者冒険者にとっては、楽々な狩場だ。


だが、2階層は冒険者として今後やっていくことができるかのふるいに掛けられる場所なのだ。

何せここは人間のような体を持つゴブリンが現れるからだ。

少し人間に似ているからと言って躊躇しているようではF級になんて到底上がれない。


「やっぱり綺麗な草原見た後のここは、汚いな」


凹凸の激しい地面が所々にあり、戦闘中に転ばないかが心配だ。

そんな心配をしていると魔物の足音と声が聞こえてくる。


「...ゴブリン」


いつもはほかの冒険者の後ろに隠れて見ていたゴブリンとの戦闘も今回は堂々とゴブリンの前に立つことができることに喜びを覚え、口角が上がってしまう。


「グゥグェ」

「いつ見てもやっぱり気持ち悪い見た目だな」

「グゥグェッ!!」


言葉を理解しているのかそれとも少し馬鹿にされたことを感じ取ったのかはわからないが短剣を地面に叩きつけて怒りを露わにしている。


「そっちから来ないならこっちから行くぞッ!」


今回は初めからスキルを使わずに上がったステータスだけで倒せるかを試す。

スキル頼りの戦闘を続ける弱い冒険者を目指しているわけではないのと、どうしても今の力量を知っておきたかった。


相手は短剣、こちらはロングソードでリーチの長さでは勝っているが、スピードで負けてしまう可能性も考え、相手との間合いには常に気を付ける。


「っく!」

「グゥグェッ!」


短剣でロングソードを軽々と止められてしまうのでやはり筋力不足なのだろう。

それにゴブリンはスキル:短剣術を持っており、レベルは低いがそれなりに短剣を扱える。

それに比べて僕は、剣術スキルを持っていないため剣に関してはド素人。


そのため簡単にゴブリンの守りを突破できずにいた。


「はぁはぁ、ふッ!!」

「グゥグェッ!!」


ガキンッ!ガキンッ!シュパッ!


間一髪のところで腹に向けて横なぎをしてきた短剣をバックステップで避けるが、服は切れ腹が露出していた。ゴブリンの攻撃はいやらしいことに胸当てや守りが固いところは狙わず薄い場所を的確に狙ってきている。


「どうするべきか」


『スキルを使う』

と、頭の中に出てきた選択を選びたかったが楽をしていてはいずれぶつかる壁を超えることができないことを理解している。そして自分自身が成長するために、スキルは使わずもう一度ゴブリンに向かって駆ける。


「はぁぁ!!」

「グェグェッ!」


自分自身を鼓舞するために叫びながらゴブリンに対してアイアンソードを振るう。

先程よりゴブリンも疲労を見せてきており、息が荒いがそれはこちらも同じ。

長くはこの戦闘が持たないことを悟り、僕は自分を信じて全力の力でアイアンソードを頭に向かって縦に振るう。


ゴブリンは自然に短剣で受け止めようとする。

短剣とアイアンソードが当たり、甲高い音を鳴らした瞬間に、僕は勝負に出る。

アイアンソードを手から離し、空いている横っ腹に一発蹴りをお見舞いしてやる。


「グェェ!?」


体術に関してド素人だが、蹴りは蹴り、当たれば痛いものだ。

ゴブリンは受け身を取ることができず少し転がる。

その転がっている隙を逃すほど馬鹿じゃない僕は、蹴りのせいで痛めた足の痛みを無視して剣を拾い全力でゴブリンに接近する。

そして、そのまま心臓めがけ突きを放つ。


咄嗟に短剣で守ろうとしたゴブリンだが間に合わず胸に深々とアイアンソードが刺さる。


「はぁはぁ、ゴブリン、おかげでいい勉強になったよ。じゃあな」


剣を抜き取りトドメに一閃放ち首を斬り落とす。

そしてゴブリンが霧になるのを確認し、地面に腰を下ろした。


「あーー疲れた」


地面に落ちているドロップ品であるゴブリンの短剣と魔石を見て満足する。




・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━


どうも、璃々宮志郎りりみやしろうです。

「努力の形」歩みを止めるのは俺次第をお読みいただきありがとうございます。

良ければを頂ければ、励みになりますので

気軽によろしくお願いいたします。

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