第20話 挑発

 すると、塩田は妹の肩を寄せる。


「いい妹さんを持ってるね。圭人」と、突然呼び捨てにされる。


「お兄ちゃん、胡桃さんと同じクラスだったんだねー!いやービックリした!」


「...雪花、いつから知り合いだったんだ?」


「え?うーん、先月くらいかな?ゲーセンのUFOキャッチャーやってたら撮り方教えてくれてさー!胡桃さんめっちゃいい人だし、可愛いし、ビックリしたよ!」


 ...停学になっていた期間にそんなことしてたのかこいつ。

あの事件の主犯がこいつなんて言っても、妹は聞く耳持たねーよな。

てか、出会ったのも偶然じゃねーよな。

本当...色々徹底してるわ。


「...そっか」


「まったくー、お兄ちゃんも隅に置けないなー」とか言いながら去っていくのだった。


「勉強中にお邪魔しちゃってごめんね」


「...何の用だ?」


「あれー?もしかして歓迎されてない?胡桃ぴえん」


「歓迎されると思ってるならそりゃもう手遅れだろ」


「それはそうかもねー」


「んで、何しに来たんだ?」


「ん?別に好きな人の家に来たくなるのは女子として自然な行動だと思うけど?」


「...嫌われる原因はあっても好かれる要因はないと思うが」


「いやいや、私からしたら圭人は好きになる要因しかないよ?初めて私に敗北を教えてくれた人だし」


「...悪いけど、あなたに圭人くんはあげないわよ」


「あ、やっと喋ったー。こんにちは、ユリンちゃん」


「...」


「そんな喧嘩腰にならなくてもいいのに〜。けど、今の発言は少し訂正してもらえるかな?今のじゃまるで圭人がお前のものみたいに聞こえるんだけど」


「私のものよ」


「ふーん。それじゃあ、一つ謝罪しておかないとね。お前のものにマーキングしちゃったこと。つまり、私は圭人とキスしたの。...きゃっ//」と、わざとらしく恥ずかしがる。


「...それが事実だとしても、もし2人に肉体関係があろうと、私はそれでもいいと思ってる。最後には必ず私を選んでくれる自信があるから」


「そりゃたいそうな自信だこと。男は最初の男になりたくて、女は最後の女になりたがるなんて言うけど、まさにお前はそうなりたいってことねー。あくびが出るほど普通の女。お前のこと、過大評価してたのかも」


「あなたにどう評価されようと何とも思わない」


「いいね、その顔。うんうん。それでなくちゃ潰し甲斐がないってもん。あっ、もうこんな時間。そろそろ帰らないと。それじゃあ、またねー」


「わざわざそんなことを言いにここに来たのか?」


「うん。まぁ、色々と釘を刺しておこうと思っただけだし〜」と、手をひらひらとさせながら颯爽と消えていくのだった。


「...相変わらず何考えてんのかわかんねー女だな」


「えぇ、そうね。それより、さっきの話詳しく聞かせてくれるかしら?」


 まぁ、そうなりますよね。


 そうして、俺の勉強時間は2時間延長させられるのだった。

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