第21話 悪魔の笑みを

 それから毎日毎日、少しずつ塩田の立場が前のように...いや、前にも増していくのが分かった。


「胡桃ちゃーん!今日カラオケ行かない?」


「え?いいよーん!いこいこー!」


 前はどちらかと言うと無口めなキャラだったのだが、一転して明るいキャラを演じていた。

いや、本当は今の姿こそが本当の彼女の姿なのかもしれないが。


 聞いた話によると全ての責任を相沢と吉田に押し付けて、自分もあたかも被害者だったかのように振る舞っているようだった。


 今思えばああやって静かにしていたのも、こういう事態をあらかじめ予想していたからこそだったかもしれないと思わせるのだった。


「あっ、そうだ!もし良かったら加賀島さんも行かない〜?」と、余計なことを口走る塩田。


「私は行かないわ」


「えー、超残念なんですけどー。じゃあ、岡田くんはどう?」


「...遠慮しとく。テスト前だし」と、それっぽい言い訳をするが分かっていたかのように切り返してくる。


「えー、私たちもカラオケで勉強する予定なんだよー?」


「...いや、静かな空間じゃないと集中できないタイプだから」


「えー、そうなんだー。ふーん。そっかー。じゃあ、代わりに園原行こっかー」


 すると、青ざめたように振り向く園原。


 そして、俺に助けを求めるような顔をする。

ったく...俺にどうしろと...。


「...園原は今日俺と勉強するんだもんな」と、仕方なしに助け舟を出す。


「静かな方が集中できるんじゃないの?人いたら集中できなくない?」


「お気遣いなく。園原はもともと静かだし勉強を教え合う分プラスだし」


「えー?でもいいのー?彼女的にはあんまり嬉しくないんじゃないのー?」


「彼女?」


「だって、加賀島さんと岡田くんって付き合ってるんでしょー?」と、知っているくせにふざけたことを抜かす。


 すると、クラスメイトがひそひそ話を始める。

すでにこの空間は全て塩田のものだった。


「俺と加賀島はそんな関係じゃない」と、一応否定してもそんな言葉は奴らの耳には届かない。


「...でも、あの2人明らかに最近仲良いよね」


「いやいや、岡田じゃ流石に釣り合ってないでしょ?w」


「何...あの2人ってもしかしてそういう関係なの...?w」


 呆れてため息が溢れる。


「みんな、そういうのはやめよ?それに...岡田くんはみんなが思っているよりずっといい人なんだよ?」


「え?もしかして胡桃...?」


「え?//ち、違うよ?//そ、そんなつもりないよ?//」と、あからさまな反応をする。


「顔赤いよ!?胡桃!」


「...も、もう!みんなバカ!//そうだよ!私は岡田くんのこと...好きなの!」


 そうして、みんなの視線が俺に集まると誰にも見えないように悪魔の笑みを浮かべるのだった。

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