第22話 倉敷という男
学校に行くと何やら塩田が騒いでいる。
こっちを見ながらキャーキャーとわざとらしく黄色い声援を上げる。
周りの人間からは『あんなやつのどこがいいの?』と思われていることは承知だが、このクラスのボスとなった彼女にそんなことを言える奴はいなかった。
はぁと、ため息を吐きながら席に座り、大人しく試験勉強をしているとある男子に話しかけられる。
「よっ、岡田!」
声の主は同じクラスの男子である
ほとんど面識はないが、たまにこうやって話しかけてくる。
まぁ、陽キャの中の陽キャみたいな人間である。
「おはよう、倉敷くん」
「ちょっと、こっちきて話そうぜ?」と、呼び出しをくらう。
絶対にいい予感がしない。
しかし、ここで争う方が後々面倒になると思い、大人しくいうことを聞くのだった。
そうして、適当な空き教室を見つけると「おっ、あいてんじゃーん」と、無断で入っていく。
「よし、それじゃあ少し話をしよう」
「...塩田のこと?」と、さっそく核心に迫る。
「塩田?...あー、あっちはどうでもいいっていうか、むしろ本当災難だなーと思ってるぜ。あんな悪魔みたいな女に付き纏われるとか」
その言葉に少しだけ驚いた。
その言い方だと最初からあいつがそういう人間だと知っていたということになる。
「あー、俺小中とあいつと同じ学校だったんだよ。昔からああいうやつで人心掌握に長けてるっていうか、人を操るのが上手い奴だったんだよ。今みたいにね。詳しいことは知らないけど、吉田と相沢もどうせ2人に操られてたんだと思うしな。というか、それに関しては岡田だって...いや、岡田の方が詳しいんじゃねーか」
ただのアホ陽キャではなかったということか。
「だとしたら俺に用って...」
「あれ?ここまで言えばわかると思ったんだけど...。まぁ、そっか。んじゃ、俺の口から言っちゃうぜ。加賀島と距離をとって欲しい」
その言葉に流石の俺も一瞬黙り込んだ。
なぜここで加賀島が出てくる?
「まぁ、ここから言っちゃうと色々と理解も納得もできないよねー。ぶっちゃけると俺は加賀島のことが好きだ。現在進行形でな。だから、加賀島があいつらにいじめられてる時俺は助けるタイミングを見計らってたんだよ。ほら、ヒーローっぽくてかっこいいじゃん?」
急に偏差値が30くらい落ちた発言。
「だけど出来なかった。岡田が助けちゃったからな。普段やる気なさそうなのにああいうことをするんだからてっきり岡田も加賀島狙いだと思ったんだけど、普段の素ぶりから見てそういうわけでもなさそうと来たもんだ。それなら俺にもチャンスがあるかなーって思っちゃったわけよ。つーことで、距離とってくれるよな?」
「...もし俺が加賀島と付き合ってるって言ったらどうする?」
「別にそれなら全然いいぜ?俺も諦めが作ってもんだ。けど、付き合ってもないのに今の距離感はないでしょっていう話。もちろん俺のわがままだけどね?」
「...少し考えてもいいか?」
「そりゃもちろん。んじゃ、テスト明けにでも聞かせてもらおうかな」と、手をパタパタとさせながら去っていくのだった。
【挿絵有】美少女が故にいじめられていた彼女を影から助けたのが俺だとバレた。その日から実はヤンデレだった彼女に毎日求婚されています。 田中又雄 @tanakamatao01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【挿絵有】美少女が故にいじめられていた彼女を影から助けたのが俺だとバレた。その日から実はヤンデレだった彼女に毎日求婚されています。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます