第18話 地獄の前の静かさ
「昨日、何してたの?」と、加賀島に詰められる。
「ん?あー...出掛けてた」
「出掛けてた?ふーん?」
「...連絡できなかったのは悪かったと思ってるよ」
「へぇ、悪いと思ってんだ。ふーん。そっかそっか。じゃあ、ちゃんと償ってもらおうかしら」
「...償うって」
すると、盛り上がっていた教室の空気が一瞬凍ったように静まり返る。
思わず振り向くと、そこにはあの女がいた。
1ヶ月ぶりに現れた塩田という女。
あんなことをしていた一味の生き残りであり、陰のリーダー的存在。
すると、クラスメイトがくすくすと笑いながらヒソヒソ話を始める。
まぁ、クラスの中心的存在であり、嫌われていた女である相沢と吉田の側近だったクソ女の仲間。
相沢と吉田が居なくなった今、彼女は嫌われる人間の筆頭であり、下手すればいじめられてもおかしくない対象だった。
しかし、そんなことをすれば自分たちもあいつらと同じ人種になってしまうということもあり、彼らがした行動は至って簡単だった。
無視、無関心、不干渉だった。
触らぬ神に祟りなしとはよく言ったものだ。
なので、彼女1人が帰ってきても何かが変わることはなく、いつも通りの日常が流れるのだった。
「どうやら杞憂で終わったようね」
「...杞憂ね」
俺と園原からすれば現在のこの状況は恐怖以外の何物ではなかった。
このままだ終わるわけがない。
一体何を企んでいる。そう勘繰るのが当たり前だった。
しかし、本当に杞憂だったようにどんどん日々が過ぎていく。
そうして、1日、2日と過ぎていった。
本当に何もなかった。
しかし、当然油断はしない。
嵐の前の静けさとはきっとこういうことを言うのだろう。
「...ただいま」
「あっ、おかえりーお兄ちゃーん」
「おっ、お兄さんおひさー」と、園原妹が手を振る。
「...おう」
「え、ノリ悪〜。あっ、もしかしてあの美人さんに振られたとか?w」と、ニヤニヤとしていると「それって私のこと?私は振ったりしてないわ」と、当たり前のように俺の横から現れる。
「うわ、出た!超美人さん!相変わらずかわええー!おっぱいでかー」
「そうね。圭人くんが揉んでくれればもっと大きくなるわよ」
「もまねーよ」と、どうでもいい会話をしながら俺の部屋に行く。
「あなたから私を呼び出すなんて珍しいわね。どういうつもり?もしかして、いよいよ私の美貌に屈した?」
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818023214134499641
「元から加賀島の美貌には屈してるっての」
「あら、珍しく素直じゃない?なんかそれはそれで嫌ね」
「...塩田に何かされてないか?」
「あら、何かと思えばそんなこと?何もされてないわよ」
「...そっか。まぁ、それなら良いんだけど」
「そういうあなたは何かされたのか?」
「別にされてない」
「そう。それなら良いじゃない。あの子も反省したということよ」
「...そんなわけがない。ないんだよ」
そうして、週明けからいよいよ奴が動き始めるのだった。
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