第14話 完璧超人

『...女友達と嘘ついて男友達...いえ、この場合は恋人と考えるのが自然だと思うのだけれど、改めてあなたとユリンの関係を伺っても良いかしら?』と、冷静に冷淡に淡々とそう告げる。


 嘘が通じる相手ではないことは一瞬で察していた。


「...えっと...」と、言い淀んでいると加賀島が携帯のメモ画面に文字を書いてそれを読むように要求する。


「...はい。えっと、ユリンさんとお付き合いさせていただいているものです」...って、えぇ!?付き合ってないんだけど!?


『そう。まぁ、そんな気はしていたけれどあの子に彼氏ができるなんてね。いつから付き合ってるの?』


「...1ヶ月ほど前からです」


『あら、そうなの。是非、一度会ってみたいものね』


「あはは...」


『それで?あなた達はどこまで進んでいるかしら?』


「...え?」


『いえ、親として色々心配なのよ。あの子、常識的に見えて少しネジが飛んでいるところがあるから、心配なのよ』


「い、いえいえ。僕たちは至って健全なお付き合いをしてますので。ご、ご安心を」


『ふーん。そう。まぁ、私は別にあの子が誰と付き合おうと別に構わないのだけれど。学生の恋愛なんて所詮お遊びみたいなものだし、変な男に捕まる前に男とはどういうものかと理解しておくことは大切だと思うしね』


「...そ、そうですか」


『えぇ。けど、お父さんはどうかしらね。あの人こういうのに厳しいから』


「...」


『もし秘密であなた達が付き合ってるなんてことがお父さんにバレようものなら、きっと大変なことになるでしょうね』


 え?何かの展開。絶対良くない流れだよね?これ、あの流れだよね?


「あの...このことは...」


『もちろん、今は内緒にしておいてあげるわ。けど、私は気が長い方ではないからね。だから近々うちに遊びにいらっしゃい。そこでゆっくり話を聞かせてくれるかしら?』


「...はい」


『そう。それは良かった。日程についてはユリンを通して伝えることとするわね。楽しみにしてるわよ、


 そうして、電話は切れるのだった。


 恐ろしい人だ。

加賀島がそのまま大人になったような、完成系超人みたいな雰囲気だった。


「...おい、なんか家に行くことになったんだけど...」


「...」


「おい、加賀島」


「...」


「加賀島」


「え?何?」


「何じゃねーよ。なんか家に行くことになったんだけど、どうすんだよ。恋人ってことになってるし」


「...そうね。ごめんなさい。あの場ではああするしか無かったの。とりあえず、あなたとは別れたということにでもしておくから安心して」


「...そんな安易な解決法でいいのか?それで納得する人には聞こえなかったが」


「...えぇ、そうかもしれないわね。だって、私...あなたの名前なんてお母さんに話したことないのよ」


「...え?」

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