第13話 バレる

「...加賀島先生、勉強したくないです」


「諦めたらそこで試合終了よ。死ぬまで続けなさい」


「...鬼」


「あら?こんなに可愛い鬼になら鞭打たれても喜ぶのがドMのあなたでしょ?」


「...たまには飴をくれよ」


「玉に飴!?とんだ変態ね...」


「...その発想に至る方が変態だと思うのだが。...ちなみに加賀島の見立てなら俺は今何%の確率で合格できるんだ?」


「そうね。あなたの得意科目と苦手科目を総合的に判断すると、最も入りやすいのは文3を選択したとして甘く見積もって大体10%程度と言ったところかしら」


「...10%か。まぁ、妥当な数字だろうな」


「きっちりこれから勉強すれば70%ぐらいにはなると思うわ。きっちり勉強すればね」


「...そのきっちりっていうのは毎日何時間勉強することを指したんだ?」


「そうね。最低毎日3時間程度かしら」


「...俺を廃人にさせる気か」


「何を言ってるの?あなたに確実な未来を保証してあげようとしてるのよ?」


 そりゃ、東大にいけたら未来は安定するんだろうけどさぁ...。


「...ちなみに加賀島の合格確率は?」


「そうね。大体85%と言ったところかしら。学部を選ばないなら9割は行くでしょうね」


「素晴らしい自信だこと」


「...両親に紹介するならそれぐらいの学力が必要なのよ」


「...いや、なんで付き合う前提なんだよ」


「何?私より好きな女の子でもいるの?まさか、園原さんに目移りしてんじゃないでしょうね?」


「別にしてねーよ」


「じゃあ、あのこと私ならどっちの方がいいのよ」


「それは...まぁ...加賀島かな」


「ふーん。どうせあなたのことだからおっぱいの大きさで決めたんでしょ。私より巨乳の女の子が現れたら私のことなんてあっさりと見捨てるんでしょ。このおっぱい星人が」


「めちゃくちゃ言うじゃねーか。俺の何を知ってるっていうんだ」


「否定しないってことはそういうことでしょ」


 確かに、そういった要因がないわけではないので否定はしなかった。


「てか、家の人厳しい感じなの?」


「えぇ。基本的には干渉しないけど、勉強とかに関しては厳しいわね」


「へぇ。それは付き合うやつのハードルも上がるわけだ」


「そうね。だからあなたには馬車馬のように勉強してもらわないといけないの。私と付き合わないとしても東大というステータスはあなたにとっては魅力的だ思うけれど?」


「...そっすね。はぁ...頑張りますよ」


 そうしてペンを走らせる。


 そんな折、彼女の電話が鳴り響く。


「...」と、画面を見つめて黙り込む。


「どうした?」


「...親からね」


 仕方ないというか、覚悟を決めたかのような顔をして、通話ボタンを押す。


「もしもし...。えぇ、友達の家よ...。えぇ...え?いや、それは...えっと...」と、俺の顔をチラチラと見る。


 なんだ?と思っていると、何やら携帯をいじって俺に言った。


「...あなた、女の子の声出せる?」


「...はい?出せるわけないだろ。声変わりは中学に済ませてるし」


「...雪花はいないもんね...。そう...よね」


「電話変われって言われてるのか?」


「...えぇ。お母さんは女の子と遊んでると思ってるから」


「...まぁ、そうだろうな」


「...行ける?」


「...やるしかねーだろ」


 すぅと、息を飲み込んで俺は一生懸命女子を降霊させる。


「んっ、んっ!!んっ!!↑↑」と、精一杯女子っぽい声にして「は、初めまして!ユリンの友達です!」


『男の子じゃない』


 1秒でバレたのだった。

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