第15話 辿り着く
「...それで?なんで加賀島さんのご両親と会うことになってるんですか...?」と、両手両足を縛られた俺に園原は質問する。
「いや、違うんだよ」
「何がどう違うんですか...?」と、言いながら手術で使うようなメスを眺める。
「...てか、なんでメスなんてあるんだよ」
「私のお父さん、お医者さんなので...」
「...」(え?俺解剖されるの?)
「簡単に他の女に尻尾振れないようにちょんぎってしまいましょうか...?」
「...勘弁してくれ。そもそも、なんで俺にそこまで執着するんだよ」
「...」
◇
私はいつだって消極的で、いつだって奥手だった。
小さい頃から髪の毛が長く、特に前髪はいつも長かった。
そうやって自分の表情を隠し、人の顔色を窺う。そんな女の子だった。
小さい頃から明るく派手な女の子に隠れてひっそりとしているのが私の日常であり、常識だった。
変わりたいなんて思っても、人間はそう簡単に変われない。
そんなことは誰よりも分かっていた。
環境が変わろうと、周りが変わろうと、私は私だった。
高校になってもそれは変わらないと思っていた。
しかし、違う意味で変化が起こるのだった。
私は入学して早々、カースト上位の女の子達に目をつけられたのだった。
「あっ、こいつパシリにしよーぜー?w」と、相沢という女がそんなことを言う。
「いいねwおい、園原!パン買ってこいよ!」と、吉田が続く。
傍にいる塩田は興味なさそうに携帯をいじる。
「...えっと、あの...」と、渋っていると私のアイデンティティとも言える前髪をハサミで切られる。
それは目の上どころか、眉毛より上くらいの位置だった。
視界が今までにないほど明るくなり、広がった。
「え?」
「...っぷwオン眉ウケるんですけど〜www」と、爆笑する女2人。
怒りなんて芽生えなかった。
ただただ悔しくて、恥ずかしかった。
そのまま教室を飛び出し、家に帰った。
親には説明できなかった。
けど、様子のおかしさと髪を見て只事ではないと察してくれたのだろう。
すぐに学校に連絡を入れてくれたのだが、結果から言うとなにも解決しなかった。
犯人の奴らが捕まるわけでも、退学になるわけでもなく、私の前髪が急に伸びるわけもなく、ただ時間だけが過ぎていくだけだった。
それから私は2ヶ月ほど不登校になった。
それでもいつかは行かないといけないと思い、意を決して学校に行った。
私にとっては人生で一番と言ってもいいほどの勇気をだした行動だったのだが、まるで何事もないようにいつもの空気がそこに流れていた。
すると、あの3人が空気が読めないボリュームで会話をしながら入ってくる。
そして、私の存在を認識するがすでに私に興味をなくしたようで、何を言うこともなかった。
私は安心した。
いや、良かったと心の底から思った。
それは標的が移っただけだったと分かってもそう思ってしまったのだ。
そんなある日のこと。
彼女達のいじめがエスカレートしていっている時のことだった。
とあるSNSが目に入る。
それはすでにプチ炎上していた、いじめの映像を写した動画だった。
そこには私をいじめていたあの女どもがばっちりと写っていた、そんな動画だった。
それだけじゃない。
名前も、住所も、電話番号も、あらゆる個人情報込みで晒されたそんな動画だった。
最初の方こそ、やらせなんじゃないか?という風潮があったが、彼女達のことを知る複数の人たちが事実を告発していき、事態は止めどないほどの炎上へと発展して行くのだった。
そして、私はそのコメントいいねを押して、彼女達にやられたことを告発した。
けど、それと同時にもう一つ分かったことがあった。
この画角...。
最初に撮られた動画はまさに盗撮といった感じで、バレないようにコソコソ撮っている感じだった。
その動画の画角から考えればこの動画を撮った人間がわかる。
そうして調べた結果私はとある人にたどり着いたのだった。
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