第7話 過去

 加賀島ユリンは自他共に認める最強の女の子だった。


 頭が良く、運動神経が良く、可愛く、よく笑う女の子だった。


 けど、成長するにつれて最強が故の孤独を味わうようになった。


 いつも輪の中心にいたはずなのに、いつの間にか輪から外されていた。

いつも笑い合っていた女の子たちは私を嗤うようになった。


 羨望の眼差しは嫉妬や妬みに変わり、だんだん人が離れて行った。


 けど、女子に嫌われても私は1人にならなかった。


 それは男子がいたからだ。

今まで女子に囲まれハードルが高かった私がいきなり1人になったことで、男子に囲まれるようになった。

つまりは姫扱いというやつだ。


 けど、そんな事態を女子たちは許さなかった。

今度は私のあらぬ噂を流すのだった。

めちゃくちゃ貧乏だとか、親が犯罪者だとか、盗み癖があるとか...。

とある日には学校の給食費が盗まれ、私はその犯人に仕立て上げられたこともあった。


 そんな時も男子達は私を守ってくれた。

そして、結果的にクラスの一番性格悪い女の仕業だということが判明し、その女の子は転校して行ったのだった。


 そうして、平穏が訪れようとしたのだが、今度は男子同士の仲が悪くなって行った。

原因はもちろん私。


 私のことを好きになった男子同士が争い合い、そのことで喧嘩して、最終的にはその矛先は私に向かった。


 そうして、地獄のような小学生の生活を終え、私は少し遠くの中学に進学することとなった。


 心機一転、そこでは昔のように楽しい学生生活が送れるとか思っていた。

けど、変わらなかった。


 いじめられっこはどこに行ったっていじめられる。


 そうして、いつの間にか私はその事実を受け入れるようになり、周りにも自分にも期待することをやめた。


 けど、それでも周りは何も変わらなかった。


 ◇


「私のことを助けて見返りを求めてこない人なんて初めてだった」


「見返りなら求めたろ。5000円」


「それは私がどうしても何かしたいからって言ったからでしょ?」


「いやまぁそうだけど。別に無傷で助けたわけでもないし、半分は俺の意思でもないしな」


「...どういう意味?」


「幼馴染に話したら助けろって言われたから」


「幼馴染とかいたんだ。それは女の子?もしかして好きなの?」


「女だけど好きとかじゃないな。逆らえないというか...。まぁ、幼馴染であり先生みたいな人だな」


「...何?じゃあ、その子に命令されたから私を助けたと」


「半分はな。だから俺にだけ感謝するのはお門違いというか、筋違いというか」


「その子に命令されたら何でもするってこと?例えば死ねって言われたら死ぬの?」


「死ぬな。多分」と、即答された。


 初めて負けたと感じた。

今まで私のそばにいて私を好きにならない男なんて居なかった。

どんな男でもちょっと色目を使えば平気で私に媚び諂うやつばかりだった。

けど、この人は違う。


「...筋違いって言うなら会わせてよ」


「え?」


「その幼馴染さんに」

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