第6話 真リーダー

 いつも通りの朝。

いや、いつも通りではない。


 例の一件で学校は対応に追われており、今日は休みになった。


 ニュースにもちょこちょこ取り上げれており、知らないところでどんどんと炎上しているその様子を見て、火をつけたはずの俺はまるで他人事のような感覚に陥っていた。


 まぁ、アカウントはもう消したし、全ての作業はネカフェでやってたし、特定はほぼ不可能だろう。


 仮に特定されたとて、学校側は俺に何も出来ない。

何かしたらまた拡散されかねないからな。

学校側との思惑は合わせずとも一致するということだ。


 そんなふうにぼーっとテレビを見ていると、妹がやってくる。


「お兄ちゃんのクラス大変なことになってたんだねー」


「...まぁな」


「でも、学校休みは羨ましいなー。私の学校でも捏造してみようかな」


「やめとけやめとけ。バレたら余計炎上するぞ」


「あーい。んじゃ、行ってきまーす」と、一個下の妹である雪花ゆきかが玄関向かう。


 そのまま玄関の扉を開けた音が聞こえたと共に妹の「うわ!?」という声が聞こえて急いで玄関に向かう。


 もしかして、マスゴミにバレたのか?と、玄関に向かうとそこに立っていたのは加賀島ユリンであった。


「おまっ、何してんだよ」


「暇だから来ちゃった」と、舌を出し笑う加賀島。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818023213554149453


「え?この美人さんお兄ちゃんの友達?」


「友達じゃないわ。婚約者よ」


「おい。妹にデマを流すな」


「デマじゃないわ。いつかそうなる。それだけだから。それじゃあお邪魔します」と、当たり前のように家に入ってくる加賀島。


「お前っ、いつからそこにいたんだよ」


「1時間ほど前かしら。あなたの両親が出ていくのを確認したのだけれど、なかなかどうしてインターホンを押す勇気がなくてね」


「...やばいやつかよ」


「あなたに言われたくない」


「...そうですか。それで何しに来たんだよ」


「好きな人とはずっと一緒にいたいの。当たり前のことでしょ?」


「...はいはい」


「その雑な返事。嫌いじゃないわ」


「...もう大丈夫なのか?」


「えぇ、あなたのおかげでね」


「...そうっすか」


「私、昔からひとりぼっちでね。いろんな人から避けられて、いろんな人にいじめられたの。明るく振る舞っても、1人でいても、なんの意味もなかったの。人間って、本当に汚い生き物よね」


「それを言うなら俺も人間なわけだが」


「そうね。あなたも汚いのでしょうね」


「...ストレートに酷いこと言うな」


「事実だもの。あんなやり方して」


「そうだな。たくさん迷惑かけちゃったことは悪く思ってる」


「そう。そう思うなら自首したら?」


「勘弁してくれ。それに問題は完全には解決してないしな」


「...どういうこと?あの子たちはどっちも退学になったでしょ?」


「そうだな。けど、1人残ってんだろ。あのグループの真のリーダー。塩田がな」

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