第14話 デジャヴ
「早く何とかしてっ!
でも絶対に、絶対に家の中で潰さないでちょうだい
片付けなんてしたくないもの」
義母さんが髪を振りながら叫ぶ。
ええ、潰しちゃダメなのか。
僕は心の中で呟いて、義母さんの上下に揺れる胸元から視線をはずして目を泳がせた。
その目線の先に、玄関横のクローゼットが飛び込んでくる。
そういや、あの中に子供のころ使っていた虫網が入ったままだ。
僕はクローゼットを開けて虫網を手に取った。
それから玄関に立ったまま虫網を伸ばし、
「とうっ」
何なら自分から網に寄って来たんじゃないかと思うくらい、黒光りするソイツは綺麗に虫網の中におさまった。
そのまま棒をひねると、ソイツは何の抵抗もなく網の底まで落ちる。
「早く、早くそいつ捨ててきてぇ」
「はいはい」
ほとんど泣きそうになっている義母さんを背に、僕は入って来たばかりの家のドアを出た。
家の向かいの土地は空き地になっているから、そこでいいだろう。
そう思っていたら、ちょうどその空き地に足を踏み入れた途端にそれまで大人しかったヤツが網からブゥゥンと羽音を立てて飛んで行った。
僕は空に向かって小さくなっていく黒いソイツを見上げながら思った。
ここまでスムーズだと、まるで虫使いか何かになったみたいだなあ。
まあ、アイツを使役したくはないけど。
義母さんが気にしそうだったから、僕は家の外の水道で軽く虫網を洗い流すと、乾かすため外に立てかけた。
それからやっと中に入る。
「ただいま」
「マコトくうううううん」
「ふぉわっ」
やわらかい2つの塊に顔が埋まる。それが義母さんの豊満な胸だと気づいたのは一瞬遅れてから・・・
ってこれさっきもやった流れだよ!
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