第23話 放課後ランデブー

放課後に友達(?)と遊びに行く。そんな約束を初めてしたせいだろうか。


いつもだったら針の筵に座っているみたいに長くて辛い午後の時間は、今日だけは不思議なくらいあっという間に過ぎていった。


そして最後のHRが終わり。


「高見ぃ、いくよ」


肩に回した手で鞄を持った神崎さんが僕の席の前に立ち、堂々と話しかけて来た。


え、あ、まじか。


教室の中がにわかにざわつく。


こういうのを避けるため、ある程度教室から人がはけてから合流して出発するものだと思ってたんだけどな。


待ち合わせの意味とは。


そんな僕の内心の突っ込みなど気にしないように、神崎さんはフフンという表情を作ってその顔を右方向に向けた。


その顔のままやけに大きな声で呟く。


「2人でクレープ、楽しみだねー」


神崎さんの視線を追う。あ、池田君だ。


部活用のバッグを手にした池田君が、ぎりりと音が出そうな顔で歯を噛みしめている。


なんなんだろう、この2人。


「早く早く。置いていくよ」


言葉は乱暴だけど、どこか甘い声色で神崎さんが囁く。


「あ、うん。ごめん、ちょっと待ってね」


僕は慌てて荷物を鞄に詰め、教室中央の自席から立ち上がった。


「アタシのよく行くクレープ屋でいいよね?」


「もちろん。あの、お任せします」


「うっし、そんじゃ行くぞ」


元気に拳を突き上げる神崎さんと対照的に、僕は縮こまらせた背中に教室中の視線を感じながら、大人しく彼女の後ろを歩いて行った。

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