第2話 ちょーっと言わなきゃいけないこと

「私の力であなたを生き返らせてあげましょうっ」


この人はいったい何を言ってるんだ。それに、ここはどこだ…


その時になって僕はやっと周りを見回した。そして気付いた。

僕は何もない白い世界にいた。


その世界にいるのは、僕と、目の前の自称女神さまだけだ。


「え、ここは」


「ここはね、なんていうかこの世とあの世の境目というか。


処遇が決まるまでね、勝手にされるわけにもいかないじゃない?


そんなわけで、ここは言うなれば…」


女神さまは指先をつやつやしたほっぺにテヘっと当てて続けた。


「留置所?」


可愛い仕草のわりに物騒な例えだ。いや、そんなことより…


「本当に、女神さまなんだ」


「あったり前じゃない」


そういうことなら…大きな問題がある。


「あのさ、さっき僕を生き返らせるとか言ってたけど」


「そうそう、それそれ」


「やめてくれよ」


僕は思わず叫んでいた。


「やっと、やっと勇気を振り絞って前の世界から抜け出したんだ。もう僕は二度と」


うんうん、と女神さまがさも分かったみたいに頷く。


それから何となくバツが悪そうな笑顔になって、両手の指先をいじいじ合わせながら控えめな声で言った。


「それに関して、ちょーっと言わなきゃいけないことがあるのよね」

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