第3話 プリスクリプション

女神さまから言わなきゃいけないこと?

僕は予想がつかずに女神さまを見つめ返した。


僕の視線を受けた女神さまは、でへ、でへへとちょっと気持ち悪い笑顔を浮かべている。


この人なんか、見た目のわりに残念だな。いや、人じゃなくて神様か。


それから女神さまは虚空を見上げながら話し始めた。


「うん、そう。誰が悪いとかじゃないの。手違い、ちょっとした手違いだったのよ。


そういうのってあるじゃない? 私もあの時、二日酔いでもうろうとしてたし」


「…それで?」


「怒んないでって」


「いや、怒ってないですけど」


「んもう。とにかくね、間違えちゃったのよ。あんたに注ぎこむ運の量」


「…は?」


「だから運の添加量を間違えちゃったんだって。わっかんないかなー」


分かるわけないだろ。僕の心の中の突っ込みを無視して、女神さまは続けた。


「プリスクリプション上はね、だいたい平均量を添加することになってたのよ。あんたの魂。


あーはいはい、いつもの感じいつもの感じって注ぎ込んでこね上げて出荷するじゃない?


それでふと気になって在庫を見てみたら、なんかやけに運が残ってるの」


そこで女神さまは両方の二の腕を抱いてぶるぶる震える真似をした。


「もう、見つけた瞬間絶望。ヤッベ、やらかしたと思ったわね」


「はあ」


「それでも何とか寿命まで生き抜いてくれれば、帳簿とかちょちょっといじってバレずに誤魔化せるかなーと思ってたんだけど」


女神さまが両手を組み、にぱっと笑った。


「やっぱダメだったみたい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る