第4話 見事なまでの美しい土下座
女神さまに「やっぱダメだったみたい」と言われて、僕には思い当たるフシがあった。
「それって、僕が自殺したこと…ですか?」
「ぴんぽんぴんぽん、その通り」
飛び跳ねるようにして言われて、僕はちょっとイラッとした。
こいつ、人の苦しみをなんだと思ってんだ。というか。
「ちょっと待ってください。
よく分かんないけど、つまり僕は人より運がなかったってこと?」
「まあ、そういうことになるわね」
「僕の運、どれくらい少なかったんです?」
「えっとォ」
くるっと女神さまが後ろを向いた。
水色の髪と滑らかな白い服が広がって、それだけ見ると幻想的だ。
その幻想的で美しい女神さまは、僕に背中を見せたまま呟いた。
「…普通の人の、100分の1くらい?」
「はあ?」
思わず大きな声が出た。慌てたように女神さまが振り向く。
「だから怒らないでってぇ」
女神さまが座ったままの僕の肩を両手でがしっと掴んだ。
「分かる。あんたの気持ちはよーく分かるわ。
でもでもでもね、私だってヤバいのよ。もしアカシックレコードにバレたりなんかしたら。
あああもう、考えるだけでガクガクブルブル」
「アカシ…え?」
「とーにーかーく」
女神さまの血走った目が間近に迫る。
「あんたは生き返るの。生き返って寿命をまっとうするの」
「いや、だから」
「お願いっ、この通りっ」
そう言うやいなや、女神さまがバッフンという音を立てて床にはいつくばった。
…見事なまでの美しい土下座だ。この人本当に女神さまなのか?
いや、そんなことをされたって僕の心は揺らがない。
「なんと言われても、嫌なものは嫌です。僕はもう二度とあんな思いはしたくない」
「そこを何とか」
今度はさっきと打って変わり、女神さまが両手をにぎにぎしながら下卑た笑顔で顔を寄せて来た。
「ま、ままま。そんなアンちゃんに耳寄りな情報がありますさかい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます