第9話 ママの指輪
女神さまが消え、僕は呆然と焼け焦げた地面を眺めた。
その時ふと、木のそばにきらっと光るものが落ちているのに気付く。
「なんだ、これ」
拾い上げてみると、透明な石のついた指輪だった。
石は傾けるたびに虹色のまばゆい光を返してくる。この輝き、もしかしてダイヤか?
落ち葉の下に埋もれていたのが、表面が焼け焦げたせいで出てきたのかもしれない。
その時だった。
「やだー、何よこれ。雷?」
甲高い声が背後からして、僕は飛び上がるようにして振り向いた。
―神崎澪(かんざき みお)
同じクラスの女子だ。だけど当然、僕はしゃべったこともない。
なにせ彼女はスクールカースト(というものが厳密に存在しているのかは分からないけれど)の間違いなくトップ層だ。
校則違反ギリギリの明るさで髪を染め、スカートは短く、いつもはっきりした顔立ちに負けないメイクを隙なくほどこしている。
まあ、分かりやすく言うとギャルだ。友達も多いし、これで意外と成績もいい。
だけど今は寝起きのまま出て来たのか、猫の模様が何匹も入ったピンクのパジャマにカーディガンを羽織っただけだ。
正直に言うと、ちょっとだけギャップに萌えた。
「え、なんでタカ…高岡?」
「高見、です」
まあ、クラスメイトとはいえ僕の名前なんかろくに知らなくても驚きはしない。
その神崎さんがキッと吊り目がちの大きな目を尖らせた。
「あんた、こんなとこで何やってんのよ。もしかしてこの爆発」
「違う違う」
僕は慌てて否定した。
「えーと、ちょっと朝早く起きたから散歩してたんだ。そしたら急に雷が落ちてきて」
「ふーん」
神崎の目がいぶかしげに僕を見る。と思ったら、僕の手元で視線が止まった。
「ちょっと、あんたそれ」
次の瞬間、神崎さんが僕に駆け寄って僕の手を握りしめた。
正確には僕が握った指輪を、だ。
「これ、ママの」
そう呟いた神崎さんの目から突然はらはらと涙がこぼれ落ちる。
「え、あ、あの」
その時、おやしろの方から野太い男の人の声が聞こえた。
「おーい、誰かいるのか」
「やば、オヤジだ。見つかったら面倒だからついてきて」
そう言うと、神崎は僕の手を掴んだまま走りだした。
「え?ちょ、どこに?」
「アタシの部屋。すぐそこだから」
「えええ?」
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