第18話 キャプテンこわい

「え、お前、神崎と何かあった?」


後ろからやたらイケメンなボイスがして、僕は振り向いた。


そこには同じクラスの池田君(身長:僕より頭2個上、肩書:イケメン)が目を見開いて立っている。


ちなみに池田君はサッカー部のキャプテンだ。


僕みたいな卑屈な人間からすると、それだけで何となくいけすかない。


でもいけすかないからと言って人に冷たく当たることもできない僕は、慌ててそれっぽいことを答えた。


「あ、いや。朝神社に散歩しに行ったら神崎さんに会って、少し世間話をしたんだ。それだけ」


世間話というには重い内容だった気もするけど、大きな嘘はついていない。か?


「神崎と、お前が? 世間話?」


だけど池田君は僕の言葉を信じられないというように繰り返す。


うわあ、気まずい。


気まずさに負けて、僕はまた適当に口を開いた。


「神崎さんも、たまにはゲテモノと異文化交流してみたくなったんじゃない?」


苦し紛れにそういうと、イケメン池田君はふはっと息を吐き出して笑い始めた。


「ゲテモノってお前のこと? 何言ってんだよ。


お前はMiiみたいな平凡顔してるけど、ゲテモノではないだろ」


Miiってなんだ、Miiって。


あれか? ゲームのアバターのあれなのか?


ちょっとディスが入っている気もするけど、池田君の笑顔には嫌味がない。


こういうところがイケメンの所以か。


「てかお前、喋れたんだな」


笑いが引いた途端、池田君が今気づいたというように目を丸くする。


「そりゃ、喋れるよ」


思わず言い返すと、池田君は右手で頭を掻いた。


「わりい、わりい。そうだよな。


でも、今まで話しかけてもほとんど返事が返って来なかったからさ」


返事が返って来なかった?


なんかそんな話、今日の朝誰かとした気がする。…した気がするっていうか、確実に義母さんなんだけど。


しばらく考えて、僕は思い至った。


もしかして、義母さんの時と逆パターンか?


僕は自分の記憶をたどった。


池田君に話しかけられたとき。例えば、何か落ちたから拾ってくれーとか、ノート取ってる?とか。何度かあったはずだ。


そのたび、確かに僕は急に舞ったチョークの粉で咳き込んだり、

足の小指を机の脚にぶつけたりして、池田君に答えるどころじゃなくなっていた、ような気がする。


うわあ…


僕は今更ながら、少し前までの自分の運の悪さに引いた。

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