パスティア王国編
妖精の国
パスティア王国は国からして不思議な国でした。木は捻くり返っているし。ソフィアが言うには妖精にいたずらされそう。
妖精がそこら辺をパタパタ飛んでいて、ソフィアを見かけるとキャッキャ、と寄ってきては挨拶したり、妖精女王ばんざーい、って万歳してくれたり、胴上げしたりしていく。
「この国に保護されればなんとかなりそうですね」
「でしょう、私と契約しているからね。だから、なんとかなると思うわ」
ここでひときわ人気なのがクロエさんだ。例の綺麗な光は妖精なら誰でも見えるようで、ソフィアのように発見すると寄ってくるのではなく、わー綺麗な光ー! といって見えなくても寄ってくる。い、移動がしにくい。
やっとの事で国境直ぐの宿場町まで到着。ここから北に行くと首都のようだ。お腹すいた、酒場に寄ろう。
「やっと宿場町ですね。妖精さんは無邪気だから無碍に断れませんし移動が大変です」
「俺で空を飛んでも、珍しがって移動が早い妖精がついてくるんだよな。攻撃魔法まで仕掛けてくる」
「旅馬車に乗った方が速いかもしれませんね。空飛ぶ移動妖精さんが運ぶのでとても速いと聞きますよ。ソフィアはどう思いますか?」
「え、あ、うん。えーと、任せるわ」
ソフィアの様子がおかしいですね。
「どうしましたソフィア。やはり気になりますか、世界樹のこと」
図星だったようで一瞬固まる。
「う……うん。あそこには本体が安置されてるから。クロエなら起こしてくれるかもしれないと思って」
「ただ、ゾンビ状態ですから莫大な光を食べますよ。クロエの光を食べ尽くしませんか?」
「死ななければ光は戻ってくるわ。性質、体質だから。だけど危険なのよね」
クロエさんはサンドイッチを食べながら様子を見ていたが。
「ソフィアのためになることなら何でもしますよ」
満面の笑みでそう答える。綺麗だなぁぁもう。
「じゃあお話だけ聞いてね。ここパスティア王国には西の世界樹というのがあるの。ある程度までは誰でも登れるんだけど、途中から試練の道になってね、辛い道になるのよ」
「登り切ると何があるんですか」
「私の墳墓と、世界樹の武具作製機械、そして世界樹の湖ね。そこに浸ると私達の言う光や匂いっていうのがパワーアップすると言われているのよ。飲んでも身体的と頭脳的の素質がアップするわ」
「行きたい!行きましょうよ!」
「毎年挑んでいる人が多くいるけど、ほとんどの人が途中棄権しちゃう、すごーーく厳しい所なのよ。スキルは使えない、精霊も呼び出せない。妖精は呼び出せるけど、妖精の能力は半減。細い道が続くわ、落ちたら世界樹がキャッチしてくれるけど、かなり前からやり直しよ」
フィーが会話に割って入る。
「俺を呼び出せれば受け止めて元の場所に戻すくらいはできる。ただ進むのは無理だ。精霊が駄目になったら妖精を使え。運び屋妖精を呼び出せばなんとか受け止めてくれるだろう」
話を受けてクロエさんが喋る。
「墳墓のことをやるんだからソフィアと賢者さまは来てくれますよね。賢者さまにおぶって、落ちたらソフィアが無数に出す飛ぶ妖精さんで飛べば良いじゃないですか。それにフィーは絆の力で精霊がいないところでも出現できますよね」
ぽかーんとしてお互いを見つめる私とソフィア。肉を食べている、話を全く聞いていないフィー。
この子、出来る。
ただ、正々堂々としたズルなので世界樹が認めず無理だと思うのですが。
翌日、妖精旅馬車に乗って首都へと向かう。浮かせる妖精が空に浮かせて、後方へ出力を出す妖精が推進させるのだが、妖精達が口々に「おねーさん光が綺麗だねー! よーし頑張っちゃうぞ!」といって馬力を上げてくれるので快速急行みたいな感じがする。前の妖精旅馬車を追い抜いているくらいだ。
直ぐに次の宿場町へ到着。速かった分ここの妖精旅馬車が出発するまえに乗れて、一気に2駅分進めたことになる。クロエさんこの国では無双状態だな。
「このペースなら明日の夜にでも王都の宿場町に到着しますね」
「いやー速い速い。クロエ様々ね」
「なんか役に立てていて嬉しいです。私の体質ってだけですけど」
「本当に奇跡の子かも知れねえな」
「なんですか、それ」
「千年単位で精霊と妖精に祝福された子が人間には生まれるんですよ。普通は生まれても表舞台には立ちませんが――気がつかれないので――、クロエさんは表舞台に立っているかもしれませんね」
ただ、まだ部屋は一つでベッドは二つ……じゃなくてキングサイズのベッド一つなんですよね。なんでも私の匂いがしないと安心して眠れないとか。
抱きついて寝てきます。
一人は相当辛かったんだろうなあ。
さて、王都につきました。なんだろう我が都市の遊園地みたいな世界ですね。
メリーゴーランドが回り、ジェットコースターが設置してある。
お化け屋敷が設置され、アイスクリーム屋さんもある。クレープも売ってますね。あのチュロス美味しそうだ。
「王様に会ったら一巡りしますか」
「本当ですか!?? やったあ、デートですね!」
「あらまあそうしたらデート中は私とフィーは消えないと駄目ね。消えるのよ、フィー」
「クゥゥン」
事前に王都内にある冒険者ギルドで私がレイドック・フキュウハであること、彼女がアルカニア王国第一王女クロエ・レイノルズであることは伝えてあり、面会も大丈夫。
五時から、との返事を王宮の方から頂いております。
時計がある文明度なんですね。
下のものが貴族や王族などに取り次ぎでもらいたいにも活躍するのが冒険者ギルドだったりします。
王都内のは出張所みたいな感じですね。大きいところにはあります。
予定時間の二時間前ほどに登城。二段の丸城。建築技術は高いですが、あんまり大きくないですね、煌びやかですが。
妖精さんはキラキラしたものが好きなようです。鳥でしょうか。ドラゴンでしょうか。
冒険者ギルドで貰った手紙を衛兵妖精に見せ、取り次いで貰います。
妖精が衛兵やってますけれども、大体あの手の妖精はバカみたいな魔力を持っていて超高速魔法で即死させられるほどの腕を持っているものです。
舐めちゃいけませんね。
ぷかぷかと執事服を着た妖精がやって来ました。付けひげをつけて雰囲気は満タンです。妖精ってヒゲ生えませんからね、雰囲気は満タンなんですよ。
「賢者レイドリック・フキュウハ殿とアルカニア第一王女クロエ・レイノルズ様でございますな。ようこそおいで下さいました。どうぞこちらに」
「どうも、レイドリックとクロエです。よろしくお願いします。一応正装持ってきてあるので観て貰って良いですか」
「わかりました。良いのが無ければお貸ししましょう。ではこちらへ」
そう言って更衣室へ案内される。
実は私もタキシードを貰ってきてあるのだ。貰ったというより拝借だが。
ありがとうなバカ皇帝。しかも新品の絹だったおかげで『リジェネート』が使えた。完全に新品同然だ。これがちょっと古かったら使えなかっただろう。ありがとうありがとうバカ皇帝。
ちょいちょいと宝石が入ったカフスピンや絹の蝶ネクタイなどをつけたら賢者のローブを羽織る。
これでいいだろう。と、思ったらまた髪の毛を整えられた。
旅してると忘れちゃうんですよね。床屋さんって宿場町には、ほぼほぼ配置されてるんですけどねえ。
控え室でクロエさんと再会する。クロエさんはシンプルなワンピースにコサージュや花飾りのピン留め?まあ花を頭に胸元に飾っていた。
「うん、また綺麗になりましたね。花は人を華麗にする」
「そ、そうですか? あは、あはは、あは」
デレッデレになったクロエさんをシャキッとさせつつ時間になるまで待つ。
「時間です、こちらへどうぞ。くれぐれも粗相の無いように」
執事の言葉と共に、扉係員が扉を開き王座の間へと進む。ここでクロエさんの安全が確保されるのだろうか。いや、なにが何でもさせないといけないな。
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