婚姻式と海、それから

 婚姻式が始まった。フキュウハ体育館で行う。


 続々と人を出迎える。フキュウハの人、賢者の人、王族に世界樹など。クロエのヴェールは下がったままだ。真っ白な繭のような形で、胸下まで全く見えない。

 まずはアルカニア国から。うちみたいな貧乏国家がと驚いていたと共に、姉の苦労を労っていた。仕打ちは基本国王夫妻のものによるものだったらしい。

 アガトー帝国は禿げ辺境伯と幼い新皇帝がやって来た。革命は上手くいったらしい

 こんなに強くなるんだったら我が国で迎え入れておけばよ会ったなどとうそぶいていた。まあ悔しいだろうな。

 パスティア王国の女王陛下は最初の無礼を未だに引きずっていて、クロエがなだめていた

 ブルンツ王国は大変だ。クロエが私は賢者じゃないのでいくらでも参戦できるんですよね、等と脅しまくっていた。ブルンツ第三王子は大変にびびっている様子。


 ちょっとびっくりしたのは西の世界樹だ。声を聞いた限りでは男性っぽかったのに、依り代は女性の要請できたのだ。何でも元々は女性らしい。古びてしまって男性化してしまったのだとか。またリザレクションを掛けにきてほしいとのこと。快く応じた。


 中央世界樹のドリアードちゃんは、一瞬だけヴェールをあげて、「私が最初に見たんだ、私が最初、旦那より先。ぐふぐふぐふ」と日頃の恨みを返していた。

 びっくりしたが可愛いので許す。


 私達が出迎えるような人々は入場したので、舞台の上、上手と下手に別れて正座して待つ。年齢が高い私が下手だ。私はお嫁さんを頂くから私が下手になる。

 長老が真ん中に座しており「お互い、中央に」と声を掛ける。おずおずと中央に歩み寄る。クロエが裾を踏まないように軽く裾を持ち上げているのはフィーとソフィアだ。お前らもクロエの下で訓練したから凄い成長したよな。奇跡の子の下で訓練するのはどんな高みに登っている精霊妖精でも成長が出来るみたいだな。


 お互いが中央に歩み寄った。長老が「座って」と声を掛ける。正座する。「では、どうぞ」


 震える手でクロエのヴェールをかき上げる。中に居たのは綺麗に化粧がなされて、まるで宝石のように固く緊張している様子のクロエだった。ゴクリと、生唾を飲み込む。

 下を見ると、大きなルビーのペンダントがかかっている。胸元がさみしくないように、ソフィアの好みに合わせたように、そのように選んだのだろう。


「凄く綺麗です。このようなものが本当に私の所へ来て下さって良いのでしょうか」

「はい、皆様が頑張って綺麗にしてくれました。よろしくお願いします、あなた」


 あなた


 あなた


 あ

 な

 た


 鼻血が出そうになりあわててケアで鼻血をふさぐ。


 ゆっくりと呼吸を合わせる。そして。


 ゆっくりとキスをした。


 唇が離れると。「この長老が見届けた。幸せに生きろよ」といい、長老が下段。代わりに母上が登壇する。


「クロエ、この秘薬をやろう。これは心臓に埋め込むタイプの秘薬で、ゆっくりと寿命が延び、最終的に不老族へと進化する薬だ。こちらを向いて胸を出して貰えるか」


 クロエが奥の方を向いて着物をずらす。そして母上が秘薬を挿入する。これは母上や長老しか出来ない特殊な行為だ。


「うん、もう既に寿命が延び始めている。寿命とその概念を秘薬が振り切ったら不老族だ。その時は盛大に祝おうな」

「あ、ありがとうございます。わたくし、なんかに」


 深くお礼をするクロエを残したまま母上が下段。こうして婚約式は終了した


 この後は披露宴をかねた立食パーティが行われた。

 何度も衣装替えをしたクロエさんは大変そうだったがとても幸せそうだった。


 婚姻式が無事に終了した後、私達は約束通り海に行った。フキュウハの海ではなく、西の世界樹の、世界樹の海へ。途中リザレクションをかけてあげた。向き向きと新芽が沢山育っている


「今日はひとはらってプライベートビーチ風にしたよ。楽しんでいってね」

「ありがとう、西の世界樹」

「ありがとうございます、西の世界樹さん」


 夜のビーチ。クロエさんの衣装は上は布がクロスしていて、下はミニスカートみたいな感じだ。六千数百年生きていても、ちょっと最新ファッションは表現できない。

 波打ち際で遊んだり、海の中へ入って泳いだり。

 一通り楽しんだ後、砂浜でのんびりと過ごす。


「いろいろありましたねえ」

「私は助けられてばっかりで」

「まあ、最初はただの人間でしたからねえ。でもすぐにソフィアを呼び出したので、ソフィアが戦力になってくれましたね、防寒具作ったり、風邪の世話をしたり」

「ソフィアちゃんはもう親友中の親友です」

「フィーはどうなんですか?」

「ただのセクハラ親父ですね」


 クゥゥゥン。


「これから賢者の嫁として世界を渡る訳ですが、覚悟はついてますか?」

「賢者のローブみたいな装備を下されば、いつでも」

「ふ、そうですね。中央世界樹で作りましょうか」


 そのあとあつーーーーーいキスをして中央世界樹へと旅だったのでした。


 これからも旅は続いていく。でも君と一緒ならどんなことが起きても笑って過ごせると思う。どこまでもずっと一緒に行こうね。可能な限り、永遠に。



改稿がんばります!それでは!

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奇跡の出会いと賢者の旅路~婚約破棄された王女を処刑から助けたんだけど、なにこれ、王女が可愛すぎる。マジかわいい。五千年ぶりに惚れそう~ きつねのなにか @nekononanika

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