大胆豪胆なクロエ
王座の間に入る。
王の名はセイレラリス・パスティア。妖精の女王だ。
階段下まで歩み寄り、自己紹介をする。
「賢者のエドリック・フキュウハです。此度はセイレラリス女王陛下と会えて光栄です」
「クロエ・レイノルズです。アルカニア王国第一王女です。此度はセイレラリス女王陛下と会えて幸甚です」
女王は少し沈黙した後、
「まだ一人いるんじゃ無いのか? 隠れてないで出てこんか。面会を中止するぞ」
と言う。
すると、ゆっくりと寝床である翡翠のペンダントからソフィアが出てきた。
「こ、こんにちは。ソフィアです」
「それが女王に対する言葉の聞き方か!」
ソフィアを念力で縛り上げると、壁に叩き付ける。
「止めてください、ソフィアは私達の仲間です」
「そ、ソフィアは私と契約してくれているだけで。契約解除しますから暴力だけはおやめください。契約解除、ソフィア」
ソフィアは消えていった。
「まあ良い、面をあげい」
そうしてやっとクロエさんが顔を上げる。目が赤かった。
「謹んで申し上げます。私を亡命させては頂けないでしょうか」
「理由は? なぜこの国に? 東の情勢にお前の経緯は聞き及んでおるが、アガトー帝国では駄目なのか」
「拒否されました。ブルンツとの関係悪化を私一人の命程度でやられたくはないと」
「南のソラリス王国やトルセン共和国では駄目なのか。どちらも大きいぞ」
「割って入りますが、パスティア、ソラリス、トルセンでパルリティア同盟を結んでいますよね。どこも同じ対応になるのではないですか?」
「詳しいな」と言い、女王は王座に座る。
「西部諸国に行ったらどうだ。あそこは現在内部に目が行っているから亡命も受け付けやすいだろう」
「西部諸国まで、ですか」
暗い雰囲気になっているとき、マジカルハンマーが飛んできた。
「ソフィアさん!?」
「セイラ! 私が魂だけの存在になったからってちょっと傲慢すぎよ! 良いじゃない亡命させたって、ここには、東のこと、なんて……」
「ソフィア! クロエさんと契約を! 存在が消えていってる!」
「大丈夫、たましい、は、せかいじゅの、ふんぼに、もどるから」
そういってソフィアは消えていった。クロエさんが心配でずっと見ていたのか。
「下賎なものが。しかし貴女、とても良い光をしているのう。どうじゃ、わらわと契約せぬか。わらわの方がソフィアなんかよりずっと役に立つぞ」
「……防御の際も攻撃の際も駆けつけてくれますか?」
「クロエさん?」
「忙しくなければ駆けつけてやろう、妖精女王の魔法防御は最高の防御じゃ。攻撃は一瞬の魔法で行うから避けられない」
「忙しくなければ、か。なら別に良いです。なぜなら」クロエさんは軽く「フィー」と口ずさむ。
フィーが巨大な狼姿で出現した。
「私は精霊王も呼べるので。契約はソフィア以外考えられません」
そしてフィーを戻す。倒れるまえにやりきった。凄いぞクロエさん。
「な、お主、奇跡の子か!?」
「さあ、知りません。精霊も妖精も仲が良いだけです」
「……はぁ!! 今ソフィアの魂を世界樹の墳墓に縛り付けた。ソフィアが良ければ世界樹の最高峰にいけ! 最高の死地に赴くが良い! あそこでは精霊もスキルも使えぬ! 落ちて死ぬが良いわ! なにが奇跡の子じゃ!」
「セイレラリス女王陛下、亡命の件は」
女王陛下はにたぁと笑い、
「世界樹を登り切って無事降りてきたら認めてやろう。世界樹の頂点には神水が湧いておる、それを汲んでこい」
と言い放った。
「わかりました、私クロエ、神水を取ってまいります」
これで面会は終わった。
もともと世界樹には登るつもりでいた。だからそんなに嫌なことをされたわけではない。
「ソフィアさんはこのパーティの頭脳でしたからね。あんなに小さくて可愛いのに」
「私よりずっとずっと長く生きてますからね。とにかく機転が利く。世界樹へ向かいましょうか。私もなじみのある場所です」
なんとなく妖精さんを使いたくないなあ……、とクロエさんがおっしゃるので、久しぶりに歩いて旅することに。
今回はフィーに乗らず、歩くそうです。体力作りもかねてますかね。
「黄金色の大型犬になっているフィーも、心なしか元気なさそうですよね」
ええ!? という表情と共に急にしおらしくなるフィー。お前邪魔者がいなくなったっていってたもんな、私にテレパシー使ってな。
フィーがさらにしょんぼりしているのは、精霊を召喚していること。私から火を貰って小型のイフリートを呼び出してますね、炎の上級精霊だ。
エーテルは使えば使うほど回復力が上がるので、こうやって地道にエーテルを消費させている、というわけです。上級精霊じゃないともうエーテル回復力が、召喚で消費するエーテルより上なのでしょう。
「地道な努力って大事ですよね。私も努力を重ねてここまで強くなりました」
「そうですよね。賢者さまはどんな努力をなさったのですか?」
「例えばエーテルを保存するスキル『エーテル・プール』とかでしょうか。エーテルを外部の球体に保存できるので常時溜めてます。これもスキルなのでエーテルを消費しますから、基礎回復力にも直結するんです。私が無限にエーテル関係のものを使えるのはこれで鍛えた基礎回復力と『エーテル・プール』の外部保存しているエーテルのおかげですね」
「わ、凄い。教えて貰いたいです」
「初歩スキルなので多分奇跡の子でも扱えるのではないかなと。奇跡の子はスキルとの相性があまり良くないんです。魔法の方が使えるかもしれない」
じゃあソフィアと賢者さまから教えて貰わないと! と意気込むクロエさん。
初歩スキルは大体のスキルブックがあるのでとりあえず『エーテル・プール』『ハイド』『エーテル・ショット』を読ませてみたところ、成功。
初級スキル『クローク』は失敗したので、初歩スキルまでですね。
「ここまで全然教えていなかったですね、精霊と妖精で十分事足りたので」
「そうですね、でもソフィアがいなくなった今、魔法が無いので私も何かを覚えないといけません」
「使えるスキルを覚えていきましょうか」
「はい!」
ソフィアがいない今、私がしっかりしなくちゃ、という意思が生まれたのか、フィーのセクハラをしっかりと拒否するようになったクロエさん。
「フィー、胸は触ってはいけません!」
クゥゥン。
「フィー、首筋は舐めていいですが、さわさわしてはいけません!」
クゥゥン。
「フィー、小型犬になってパンティーを見ない! 蹴りますよ! そこそこ長いスカートなのに覗き込むなんて最低です!」
クゥゥンクゥゥン。
ただ、ソフィアがいなくなってさみしいのか、以前から一緒にお風呂に入るようになってはいたんですが、一つ変わったことがありまして。
下着姿だけで入るようになりました。攻めてきましたね。
宿場町でキングサイズベッドが入る部屋って、高級なのでお風呂も豪華なんですよ。
しっかりしたブラジャーだしパンティーなので透けないんですが。人間の十九歳はもう大人の体に近いです。
急遽賢者のローブをお風呂に持ち込んでお風呂にかぶせて使うことになりました。ローブを脱いでいたらまずいです。暴発の恐れがあります。
ローブは大きいですからね、お風呂の、横? 横幅か。横幅を覆い尽くすので私もクロエさんも大胆な行動はしません。精神を押さえられてますからね。
賢者のローブで、一般人にとっては強力に精神が安定するからクロエさん寝ちゃうし。
ちなみにフィーがうらやましがって私の手をがぶがぶ噛みつくのですが、絆の維持には私の血を飲ませる必要があるのでちょうど良い感じです。
いやー、クロエさんが私を好きなのはわかりますけど、私は賢者ですからねぇ……。
出会うんだったら賢者になる前でしたね……。
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