告白と食事会

「そうかそうか、やっと認めたか」

「はい、ご迷惑をおかけしました」

「後は待つだけだな、待つのは凄い時間が長く感じるからな、覚悟しておけ」


 母上にも報告し。


「そうか、だからといって試練の内容は変化しない。池の水ほとんど持って行った恨みも忘れないウジウジ」


 ドリアードちゃんにも報告した。池の水どうにかしなくちゃな……。


 後は待つ。

 待つ。

 ひたすら待つ。


 ちょうど良い、

 という言葉が合うかわからないが瞑想をすることにした。

 瞑想はスキルパワーとエーテル量、エーテル回復量が上昇する。なにもしないで待つより心が澄むし健康に良い。

 といっても六百数十年瞑想してきているので数年の瞑想は微々たるものだ。地道に年数を稼いで千年一万年と瞑想期間を延ばす訳だな。継続は力なり。


 瞑想を始めて二年が経つころ、ドリアードちゃんから途中経過報告が届いた。


「予定の三分の二をクリアした。池の水はまだ貯まっていない。ウジウジウジウジ」

「そうですか。『ウォーター』とか『アクア』で溜めましょうか?」

「スキルで出来た汚い水なんてこっちからお断りだ! ばーかば-かば-かば-か」


 それじゃあそろそろ準備しないといけませんね。


 試練の出口付近に花のアーチを飾り、拍手をする機械を設置する。これでおめでとうは整ったな。

 次に下界におり、パスティア王国からお花を調達する。妖精さんが育むお花は人間では比べものにならない。西の世界樹のお花も摘ませて頂いた。ドリアードのお花も素晴らしいことこの上ない。

 ついでに妖精もご参加願った。こういうのは大好きだからね、妖精さんは。

 そしてシチューを作りー、釜でパンを焼きー、ドリアードちゃんに木の上で釜を作るな馬鹿! と怒られー、レンガの土台を持ってきてくれたのでそこに設置しーツンデレだなこの子なんて思いながらパンを焼きー。保存スキルで状態保存。いつでも食べられるー。


「楽しくて気がつかないんですねえ、ご主人様」


 激しくびっくりして後ろを振り返ると、


 クロエがいた。


「クロエ!」


 思わず抱きしめる。


「ご主人様苦しいです」

「会いたかったよクロエ!」

「私もです。じゃ、せっかくなので花のアーチから堂々と帰還しますね」


 花のアーチを素通りしてこっちに来たらしく、なんの音もしないのは当然だった。


 じゃじゃじゃーん、じゃじゃじゃーん、じゃじゃじゃーん、じゃじゃじゃんじゃじゃじゃんじゃじゃじゃかじゃーんじゃかんじゃかかんじゃかなかん。


「わー素敵な音楽。そして拍手の機械、ウケる。そしてアーチをくぐった先には……ご主人様ー!」

「そうか、私を師匠としたんだね、クロエ」


 ぎゅーっと抱きしめ合う。


「ええ、師匠はご主人様、いえ、エド様しかいませんから!」


 普通の人が頂上へたどり着いても、寿命が延びるだけでたいした意味は無い。真神水は飲めるが。

 なので師匠を取り、これからの長い人生や心構えなどを学ぶのだ。武芸者であれば武芸を学んだりもする。


「そうか、あ、ありがとうクロエ。それじゃ、じゃあ、食事にしようか。腕によりを掛けて作ったんだぞ。あと、その、なんだ」

「なんですか」

「すー、はー。食後に伝えたいことがあるんだ」

「はいっ」


 わーっと花火魔法を打ち上げる妖精達。何かもうなにを言うのかわかってますね。


 それでは大食事会の開催です


 お肉は野獣のお肉を用意しました。これを火であぶりながら回転させて、こそぎとりながら食べるんです、美味しいです。

 野菜はここに生えている野菜をふんだんと。ハゲたってドリアードちゃんが泣いていましたがすぐに生える生える。格別に美味しいですね。


 妖精さんも参加し、フィーもソフィアも参加し、楽しい食事会でした。


「あーあー、それえでえわあー、ここより新郎から新婦への愛の告白でぇす」


 酔っ払った妖精さんが勝手に宣言をする。


「ちょっと、まだ新郎新婦じゃないですよ!」

「まだ、ね、まだ」

「はー、もう揉めねえのか、はー」


 マジカルハンマーをぶん投げられる犬を尻目に、マイクを持った妖精の下へ私とクロエが集まる。


「クロエさん」

「はい」

「私と、いえ、僕と、今夜、こん、こ」

「頑張ってくださいエド様!」

「すー、はー。はいっ。僕と婚約してください!」

「はい! 婚約期間が終わって結婚するまで絶対一緒にいましょう!」


 妖精が、なんで婚約期間がどーで結婚がどーのとつぶやいてる。


「ウチら不老族はとにかく長い時間を過ごす。婚約即結婚して酷い目に遭った家庭を何度も目にしてきた。だから、婚約を非常に重要視して、結婚は婚約の五千年後に行うのよ。婚約ならすぐ解消できるからね。そういう家庭もよく見るよ」

「あれ、バラちゃん何度も父親変わってるよね。そのたびに結婚まで五千年待つの? 私たち妖精はつがいにはならないからなあ」

「そうだよ。七十人ほど旦那が変わったけど、婚約は盛大に、結婚は簡素に行ってきたよ。みんな愛してた、ただ、みんな戦士だからすぐ死んじゃってね……」


「子どもは沢山残したけどな、がはははは!」というバーバラを尻目に、会場の注目は長い長いキスをしている二人だった。



「あれ?」食事会尾終わった後片付けをしている時に、ドリアードちゃんがクロエの変化に気がついた。

「ちょっと顔見せて」そうして顔を凝視するドリアードちゃん。綺麗同士が見つめ合うってなかなか良いな。

 どこかから投げられたマジカルハンマーを手で受けると、ドリアードちゃんが「やっぱり変わってない」とつぶやく。


「なにが変わってないんですか?」

「クロエの寿命。普通なら二千年延びてもおかしくないのに。魂の寿命はあと八十年だ」


 バーバラが素早く反応する。


「空中都市フキュウハに行こう。あそこの道具なら大丈夫なはずだ」

「エド様?」

「すぐまいりましょう。寿命が延びないなんて初めて聞いた」

「多分だけど、私より魂が強くなっちゃって、寿命増加効果が効かなかったのかも。そんな人間聞いたことない、イジイジ」


 行く前に、ここに感謝を込めてアメフラシの歌を歌いたいというクロエ。


「あーめふーれー、あーめふーれー、やーさしいあめよふーれー、きよーいーあーめーきよーいあめー、あめはだいちのみーなーもーとー」


 結果、土砂降りの雨が降った。


「クロエ、お前良い奴! 池の水が回復した! あとは浄化されれば真神水になる! 一週間もかからない! クロエ、お前良い奴!」


 クロエ、中央世界樹の祝福を得る。土砂降りの雨と引き換えに。


「風邪引くから転移門まで走るぞ!」


 クロエさんを抱きかかえて走ろうとしたが。


「私も早くなりましたよ!」


 と、時速百ケロメロスほどの速さで走るクロエ。ああ、こりゃ本当に人間辞めてるわ。

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