第5話

馬車はココから復興が東のはずれ、未復興領域との境界にある村まで送ってくれるらしい。

名目上の理由は、未復興領域の浄化だ。

民衆の不安を無駄に煽らぬように、今回の件はまだ機密なのだ。

まずは魔獣に対処をし、原因を確定させてから発表を行うと師匠は言っていた。

そう言われていたはずなのに、先ほどの自分の軽率な行動に少し恥ずかしくなる。


あくまで名目は未復興領域の浄化だ。

だからこそ、馬車の椅子にしっかりと腰をかける。

師匠の屋敷の門が開き、馬車がゆっくりと動き始める。

門の外から歓声が聞こえてくる。

馬車が歓声の方へと進んでいく。

門を潜ったその時にひときわ大きな歓声が上がる。

いつの間にか、今回の遠征を名目上の理由とともに師匠が周知していたのであろう。

僕やアルバを呼ぶ声がいくつも聞こえる。

その声に向かって、僕とアルバは手を振る。

それだけで民衆の多くは歓喜し、一層の祈りを僕らに捧げてくる。


城門へ着くまでの間も、絶え間なく多くの人が祈りを捧げてくるので、僕とアルバは笑顔を顔に貼り付けひたすらに手を振り続ける。

ようやくたどり着いた城門は、僕らを待っていたかのように大きく開かれており、番兵達は敬礼をして待っている。

そんな彼らの仕事ぶりに「いつもありがとう」と声をかけると、彼らは感涙を流しながら、ピンと背筋を大きく伸ばし直し敬礼をさらに深くする。

そんな彼らを横目に、馬車はゆっくりと城門を潜り、街を出る。

街の外にはきっと僕らのせいで足止めをくらっていただろう人々が多く並んでいるが、誰一人として不満を上げず、街の中の人々と同じように僕らに祈りを捧げている。

そんな彼らにも同じように手を振る。

街を離れ、人がほぼいなくなったことを確認すると、僕は結界を作り出す。

ただ声が漏れず、外からはこちらを視認できないという簡単な物だ。


「つか…れた…」

結界が展開されたのを確認すると、アルバが深く息を吐きながら手を下ろす。

「そうだね。」

僕も脱力しながら、そう答える。

街が大きいのと馬車のペースがひどくゆっくりだったこともあり、ここまで非常に時間がかかってしまった。

おまけに普段使わない筋肉の使い過ぎで腕がへとへとだ。

「これ、明日筋肉痛になるかも。」と僕が言うと、

「私も…」とアルバが苦笑しながら返してくる。

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