第22話
「構わない。このまま話そう。シレーヌ頼む。」
師匠の声が聞こえる。
いつの間にかシレーヌさんの横に立っていたようだ。
僕らが驚嘆の声を上げるよりも早く、シレーヌ様は話始めた。
「タルシス。貴女の判断は正しかったですわ。貴女の弟子が村で戦ったという魔獣ですが、アレは人間でしたわ。」
その言葉に僕とアルバは息を呑む。
「いえ、かつて人間だった物と言った方が正しいかしら。
分析魔法を使ってみたところ、その体内から無数の新種の魔獣の痕跡が確認されましたわ。
おそらくは、食事などによって寄生する魔物だったのでしょう。
それらが体内で数を増やすことで、身体を乗っ取り人間が魔獣になるなんて異常事態が発生したのでしょうね。
身体も小さく魔力もあまりにも小さいですし、一定の数になるまで休眠を挟みながら少しづつ増えられたりしていたという可能性を考慮すれば、探知出来なかったのも無理ないですわ。」
シレーヌ様の言葉に納得するが、何かが少し可笑しい。
「あの、シレーヌ様。僕は、いや僕たちは魔獣になる瞬間を確認しました。」
僕の言葉に驚いたのか。
師匠たちの四つの眼差しが僕を突き刺す。
「魔獣に嚙まれた少女はみるみるうちに、反応が減衰していき、死にました。
そして、死んだ直後に急激に魔獣の反応が発生し、起き上がりました。」
「なるほど。やはり彼らはそうやって増えるのですね。
それに増殖速度も思っていたよりも体内で急激に数を増やしたのでしょうね。
食事だけでの感染にしてはあまりに被害者が多いのも、のも納得出来ましたわ。」
僕の言葉にシレーヌ様は納得したように言葉を返す。
「とすると、これはまだ手の打ちようがあるな。」
師匠が少し安心したかのように話し始める。
「もし、休眠状態を取れるような存在であれば、結界を通った後に発祥という可能性もあったが、即効性ならば話は別だ。
明らかな異常者と食料類に対してのみ注意をすればいい。」
「そうね。確かにそれで被害は防げるわ。でも、それはつまり」
「ああ、そうだ。我々がいる結界のある街以外の全ての村や街は一度破棄をする。」
シレーヌ様の問いに師匠は少し悔しさをにじませながら答える。
あまりの衝撃に僕らは何も口を挟めないでいた。
その後、師匠たちは淡々と避難計画や他の魔法少女への連絡について協議を重ねていた。
そして、次の日には領民に対して事実と避難指示が公布された。
だが、避難を許されたのは一部の若者と子供だけだ。
そして、むしろ老人達はこの街からの退去を命じられた。
当然、抗議の声はあった。
だが、その抗議の声も師匠の涙ながらの謝罪によって、すぐに収まり、街に入ってくる者と街を出ていく者で街の入口は混雑した。
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