第21話

そのまま、シレーヌ様も地面に降り立つと、ゆったりと語り始める。

「タルシス、あなた達の師匠から連絡があったの。

境界の近くの村で異常があって弟子の二人が対処しているが、最悪の可能性を考えて協力してほしいってね。

まぁ、タルシスが行くより私が行く方が早いから当然よね。

だから、私大急ぎでもらったのだけれど、準備に少しかかってしまって到着したころには貴女達が村を発った後だったわ。

でも、タルシスが連絡をくれてよかったわ。

あれは、とてもあのままにしておけなかったもの。」


「あの、それはいったいどういうことでしょうか。」

僕が疑問を口にすると、シレーヌ様は口元に指を当てうーんと考え込む。

そして、

「今、ここで話してしまっても構わないけど、時間もかかるし、タルシスにも早く伝えたいわ。

だから、それはタルシスと合流してからにしましょっか。」

と誤魔化すように笑うのだった。


「タルシスに早く合流したいし、みんなその馬車に乗ってくださる。」

とシレーヌ様が出す指示に僕らは粛々と従う。

皆が馬車に乗り込むと、「行くわよ。」とシレーヌ様の少し気合の入った声が聞こえる。

少しの間をおいて、ガコンッと何かが外れる音がして、浮遊感が身体を襲う。

直後、グンっと身体が後ろに引っ張られる感覚が続き、馬車の壁面に身体が押し付けられる。

グングンと続いた加速が緩まったかと思うと、減速の勢いで今度は窓に押し付けられる。

減速が終わると、「着きましたわ」とシレーヌ様の声が聞こえて、地面に降ろされる。

もみくちゃになった車内からは当然返答などない。

「早く降りてらっしゃい」

シレーヌ様からの呼びかけが続くので、僕はフラフラと椅子を掴みながら立ち上がる。

しかし、それでも脚に力が入らずまた転けそうになる。

脚に魔力を流し込み、無理やり強化して転げそうになるのを抑え込む。

目線をそのままに車内を見るが、立っている姿は見えないので、視線を下に降ろす。

「あぁ。。。」

思わず声が漏れる。

案の定というべきか皆倒れていた。

アルバはさっきまでの僕と同じく立ち上がれないでいるだけなので、まだ軽傷だろう。

少女たちの方がひどい。顔を真っ青に染めながら気絶している。

僕たちですら、こうなのだからこれは仕方ないだろう。

僕はアルバに手を伸ばすと、そのまま彼女の手を取って引き上げる。

アルバは脚に力が入らないらしく、僕の腕にもたれかかってくる。

僕はアルバに腕を貸しながら、扉を開け社外へ踏み出す。

「シレーヌ様。申し訳ありませんが、生存者の娘達は完全に意識を失っています。いかがいたしましょう。」

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