第6話
馬車に揺られながら、ゆるゆると窓の外を眺める。
ここら辺は本当に復興が進んだ。
浄化のおかげもあって自然もだいぶ元通りになっている。
「ホント、平和になったね」
そんなことを思わず呟く。
「うん…あの…頃からは…考えられ…ない…くらい…」
そう返すアルバもきっとあの頃のことを思い出しているのだろう。
魔獣の血によって荒れ果てた大地を。
「守り…たい…。もう…戻させない。」
強い決意を瞳に込めながら、彼女はそう呟く。
そんな彼女を見て、「そうだね。今回の任務を必ずやり遂げよう」と僕も返す。
二人で目を合わせ、大きく頷き合う。
辺境の村に着いたのは、4日後の昼過ぎであった。
じつに順調な旅であった。
道中特にトラブルに見舞われるようなことはなく、途中の町々のおかげで食料や水に困ることもなかった。
魔力も体力も十分に温存ができたので、魔獣討伐に万全のコンディションで挑めそうである。
僕たちが村に着くと、村人たちは総出で出迎えてくれた。
村長が代表して僕らにあいさつをすると、すぐにこの村の中央にある一番大きな家まで案内をしてくれた。
師匠が事前に駛馬を出してくれていたらしく、滞在期間中村長の家を自由に使っていいとのことであった。
村人の厚意に感謝を伝えると、僕らは村長の家の中に入る。
大きさこそ村一であるが、木造で築年数も経っており、ところどころに経年劣化は見られるが埃一つないほど手入れが行き届いていた。
きっと、僕たちが来るから村人が総出で手入れしてくれたのだろう。
感謝の言葉しか出ない。
せっかく彼らが手入れをしてくれたのだ。まずは応接室を使わせていただくことにしよう。
アルバと二人で応接室に入ると、僕は馬車の時と同じように簡単な結界を張る。
そして、向き合うように備え付けの椅子に座る。
応接間の椅子は、この村にしては上等なのか馬車の固い座面と違って柔らかく僕を柔らかく包んでくれる。
さらに深く腰を落としたくなるのを我慢し、背筋を少し伸ばす。
そして、一呼吸おいて目の前のアルバに向かって僕は話始める。
「じゃあ、始めようか」
アルバは軽く縦に振って、同意を示してくれる。
僕らはこの後に控える未復興領域への突入と魔獣との戦闘に向けて基本的な事項の再確認をする。
これから僕らが向かう未復興領域は、隣にあるというシレーヌ様の担当領域まで約50kmに渡って続いている。
通常であればシレーヌ様との境界までココから探知することは出来るのだが、奴らは地中に潜っているのか魔力探知で見つけることができない。
地中まで魔力探知をするとなると僕らの実力ではおそらく半径5kmが限界であろう。
そして、師匠が魔獣を探知したという位置はこの村から真東に行ったシレーヌ様担当領域との境界付近とのことだ。
だから、僕らはこの村から真東に向かって5kmごとに魔力探知を繰り返しながら、境界を目指す。
もし境界に到達しても見つけられない場合は、境界に沿って探索を行うことにした。
奴らの生息上、この村を目指すか境界にある結界を超えてシレーヌ様の区域を襲おうとする可能性が高いからである。
そして、もし魔獣の数が予想よりも多かった際のことを想定し、アルバの魔力を温存するために僕が行うことにした。
魔獣達の発見確率を少しでも向上させるために、奴らの活動が活発化する夜間を主として探索を行う。
そのため、出発は今日の夕暮れの少し前にすることとした。
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