第16話

少しすると落ち着いたのか、アルバは僕から手を離すと恥ずかしそうに顔を拭っていた。

そんなアルバの様子に気まずさを覚えて、何かを話さなくてはと思い、「この後どうしよっか」と切り出す。

「どういう…意味…?」アルバも会話の糸口を見つけられてホッとしたのか、僕の会話にのってくれた。

「このまま休憩して魔力と体力を回復させてから移動するか、このまま一気に村まで帰るかってこと!」と僕は返す。

アルバは、顎に指を当てて考えるように「う〜ん…」と唸る。

非常に可愛い。


少しすると決断したのか、顎から指を離すと「このまま…帰ろう…」と言ってくる。

「早く…師匠に報告したほうがいい…。師匠の探知した数は…もう倒したから…魔獣のリスクももう無い…はず…」とアルバは続ける。

確かにアルバの言うことは最もである。師匠なら探知で討伐したことは感知してるかもしれないが、生の報告というのは重要だ。

師匠ならそこからさらなる何かを見つけられるかもしれない。

僕もアルバの意見に賛成だ。

「よし!じゃあ、帰ろっか!」僕が賛成を示すと、アルバは嬉しそうに頷く。


月明かりに照らされる赤黒い大地。

大きな一つの影だけがゆうゆうと西へ大地を飛んでいく。

月明かりによって浮かび上がるその姿は、まるで巨大な蝙蝠のよう。

すなわち、僕だ。


僕らは、西へ向かってこの大地を飛んでいる。

長距離移動のためにスピードを落としているため、全身にあたる風は先ほどよりもだいぶ穏やかだ。

証拠に、アルバも僕の腕の中で非常にくつろいでいる。


だが、おかしい。

いくらスピードを落としてきているはずなのに、村が見当たらないのだ。

方角的にも距離的にも、もうそろそろ村が見えてもいい頃なのに、村の明かり一つ見つからないのは流石におかしい。

「ゴメン、迷子になったかも。少し方角を確認する」

僕はアルバに声をかけると、北斗七星の位置を確かめるために一度地上へと降り立つ。

羽ばたきを止め、勢いを止めるために滑空をしながら、着地をする。

慣性のせいで着地時に、衝撃が加わる。

衝撃を脚で殺し切ると、僕は空を見上げて北極星を探す。

北極星はすぐに想像通りの位置で見つかった。

北極星の位置が認識の通りであるとすると、方角もあっている。

やはり何か可笑しい。

僕は探知魔法を発動させる。

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