第17話

「何だよ!コレ!」

思わず僕は声を上げる。

アルバが心配そうに僕の顔を覗き込んで来る。

「ココより5km東に魔獣の反応。1個1個は小さいけど、数は約50個。村のあった位置と同じだと思う。住民の反応もまだ少し残っている」

僕の言葉にアルバは息を呑むと、走り出そうとする。

「待って!」僕はアルバの手を掴み、無理やり引き止める。

アルバが非難する視線をこちらに向けてくる。

だが、僕はアルバが抗議を口にするよりも早く言葉を続ける。

「さっきの戦闘でアルバも魔力を使ったでしょ。残存魔力はどのくらい?勝ち目はある?」

僕の言葉にアルバはハッとした表情を浮かべる。

どうやら冷静になったようだ。


「あと9割くらい…。パシは?」

「あと3割ってとこだね。戦闘とここまでの飛行で魔力を食ってしまったみたい」

アルバは十分に戦闘が出来そうな余力はありそうだが、僕はだいぶ心もとない。

「パシ…探知で反応があった生存者は何人?」

「4人だよ。他に人間の反応は感知できなかった。」

僕の言葉に、アルバは悲壮な表情を浮かべる。

「パシ…救出だけでも出来ない…?」

縋るようなアルバの言葉。

アルバの村も僕と同じように過去に魔獣に襲われ、運よく生き残ったアルバだけが師匠に救出されたと言っていた。

僕と違って亡くなった両親や村の人々のことを覚えているアルバは、きっとかつての自分自身と今の状況を重ねているのだろう。

だから、僕は彼女の意を汲んで「わかった。救出だけだよ。師匠も魔力探知でこの事態を察知しているはず。殲滅は師匠が来てからにしよう」と賛同の意を示した。


そうと決まれば後は早い。

僕は翼を再度展開すると、アルバを抱えて村の方へと飛翔する。

僕らの心を移すかのように、いつの間にか空には厚い雲が増え、星々の明かりを閉ざしている。

 

大きく勢いを付けながら、村の入口に着地する。

反動が重く脚に響く。

僕は、アルバから腕を離し地面へと開放すると、魔力探知を発動させる。

魔獣はこちらに注意を引かれたように動き始めている。

作戦の第一フェーズは成功だ。

残存魔力の多いアルバがココで魔獣達の注意を引いている間に、第二フェーズとして僕が生存者を救出すれば目的は無事に達成できる。

これなら、大丈夫。

そう、思った時だ。

「たす、助けて!!!」

少女の声が村に響き渡る。

大きな声を上げながら、生存者の一人が家を飛び出してきたのだ。

先ほどまでこちらに注意を引かれていた魔獣たちの注意が一気にそちらに集まる。

マズイ。

僕がそう思った瞬間に、白い影が声のした方へと飛び込んでいく。

白い影は、地面に白い軌跡を残しながら、最短距離で少女の元へ飛んでいく。

白い影は少女へと手を伸ばしながらさらに加速をする。

少女も白い影、アルバの方へと手を伸ばす。

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