第19話

「パシ!なんでなの!」

アルバは僕の襟を掴みながら叫ぶ。

僕は「いや、ちがっ」としか言葉が出ない。

アルバが僕の襟をさらに強く絞める。

つられて、僕の顔が少し持ち上がって、朝日が目に刺さる。

そして、朝日に照らされた村の姿を見た僕はアルバの腕を掴むと少し力を入れて、無理やりその手を引き離す。

アルバは非難の目をこちらに向けてくるが、今はお構いなしだ。

どうにか気道を確保すると、大きく一呼吸し、息を整える。

そして、「アルバ!周りを見て!」とどうにか叫ぶ。

アルバもそこでようやく周囲を見渡す。

息を呑む音が聞こえる。


それもそうだろう。

朝日に照らされ浮かび上がったのは、氷漬けとなった魔獣。その姿はまさしく人間そのものであったからだ。

しかも、その中には僕らをここまで送ってくれた御者や村長といった見覚えのある顔もあることから間違いはない。


「なん…で…」

アルバが周囲の状況を理解しきれずに、言葉を漏らす。

彼女の疑問に、僕も「わからない」とただそう返す。

「でも、」と僕は続ける。

「さっきあの少女がアルバの腕の中で息を引き取った直後、、、魔獣の反応があった。」

アルバは僕の方を見る。

「だから、だから、、」僕の言いづらそうな様子を見て、彼女も理解をしたらしくゆっくりと彼女の手から力が抜ける。


その後のことはもうほとんど覚えていない。

村を探して生存者を探したが、生き残っていたのは年端のいかぬ少女が3人だけだった。

他はすべて遺体か魔獣となって朽ち果てていた。

村人の一部はやはり魔獣に成っていたのだ。

理由はまったくもってわからない。


少女達の話によるとどうやら村人達は昨夜も帰らなかった僕らを心配して、捜索隊を出すか昨夜話し合っていたそうだ。

その話し合いの最中、突如村から明かりが消え、絶叫が響き、突如狂ったかのように一部の村人が他の村人を襲うようになったらしい。

そして、狂った村人に襲われた村人の一部が同じように狂って行ったとのことだった。

生存者の少女たちは、ベッドの下で息を殺していたために、運よく生き残ったようだった。


原因がわからない以上、このままココにいるのは非常に危険だったため、幸運なことに無事だった馬車へと荷物と少女たちを乗せると僕らは村を急ぎ後にした。

どうやら魔獣と化した村人はなぜか人間以外襲わなかったらしい。


昼を過ぎたころ、村から十分な距離を取れたことを確認した僕らは馬車を止めそこで休息を取ることにした。

急がなければならない状況なのは理解している。

だが、流石に連戦で魔力も体力も底を尽き欠けている。

このままでは、不測の事態があった時に対応できない。

僕らは、どうにか結界を張ると僕らはそのまま場所の荷台で泥のように眠りについた。

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