第2話
木製の大きな両開き扉の中からは、いつも通り朝食の良い匂いが漂ってくる。
いつも通り「おはようございます」と言いながら、食堂の扉を開ける。
机の上にはいつもと同じように焼きたてのパンと温かいスープが置かれている。
だが、いつもと違いメイドの挨拶は返ってこない。
代わりに、奥の席から凛とした声で「おはよう」と返ってくる。
師匠だ。
珍しいことに、すでに師匠が食堂で僕らを待っていた。
普段であればまだ寝ているはずなのに。
おまけにメイドがいないということは人払いをしているのだろうか。
そんなことを考えながらも、
「おはようございます。タルシス師匠」と師匠に向けて、頭を下げながら改めて挨拶をする。
「相変わらずだな、パシファエ。そんなに改まらなくていいといつもいってるだろ」と師匠は笑いながら返してくるので、
「いえ、ココだけはどうしても譲れません。僕が今こうしているのもすべては師匠のおかげなのですから」と答える。
そう。これは僕なりの師匠への礼儀であり区切りだ。
あの日、何もかも燃え尽きた真っ白な大地で師匠に救われた僕にとってのけじめ。
「まぁ、いい。」不意に立ち上がりながら僕の話を流すと、
「至急の案件だ。手短にいこう。」
いつになく真剣な口調で師匠は話を切り出す。
やはり、何やら重要な話があるようだ。
身構えながら、師匠の言葉を待つ。
「魔獣が出た。この街からそう遠くない位置にだ。」
だが、師匠が放ったその言葉の衝撃は僕の決意を易々と砕く。
あまりにも衝撃的過ぎて、ただただ言葉を失い、ただただ驚愕をする。
確認するまでもないが、きっと隣のアルバも僕と同じように言葉を失っているであろう。
それほどまでに、師匠の言葉は衝撃を帯びていた。
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