第14話
そのまま、星空の下を数分も飛ぶと、風切り音とは別の音が地上から響いてくる。
魔獣だ。
大型のトカゲに酷似した魔獣が土煙を上げながら、こちらに走ってきている。
僕はアルバから右手を離し、横へまっすぐ伸ばす。
手を真横に伸ばしたままの状態で、魔獣の左側をすれ違うように飛び込む。
魔獣の横を通る直前に、僕は右手を蛇へと変える。
蛇となった右腕と魔獣たちがぶつかり合う。
僕らの速度と奴らの移動速度がそのまま衝撃となって、奴らを吹き飛ばす。
グァッッッ 右肩を中心に押し寄せる反動に思わず声が漏れる。
蛇の胴体をクッション代わりにすることで、どうにか減衰したが、それでもこの衝撃だ。
腕がちぎれなくて、本当に良かった。
ゆっくりと地面に立ち、アルバを地面へと下ろす。
アルバは一瞬非難の目を向けてきたが、すぐに魔獣たちが飛んで行った方へと視線を向けた。
僕も、右手を元に戻しながら、アルバと同じ方角へと視線を向ける。
先ほどの衝撃で飛び散った土が邪魔で奴らの姿は見えない。
赤黒い土煙が一瞬揺らぐと、ゴッと強い力で大地を蹴る音とともに大きな影がこちらへと飛び込んでくる。
とっさに右手を前に突き出す。
突き出した右手をそのままサソリの尾へと変え、奴が突っ込んで来る勢いそのままに尾針で胴体を貫く。
しかし、突っ込んでくる威力を足だけでは殺し切れず、そのまま身体が宙に浮きそうになる。
マズイッ 咄嗟に脚へと魔力を通す。
流し込まれた魔力で脚がまるで牛のように膨張する。
そのまま脚に力を入れ地面へと食らいつく。
しかしいくら踏ん張っても、衝撃を逃がし切れず、ギャリギャリと音を立てながら後ろに流される。
止まった。
衝撃を一身に引き受け、地面との間で大きな音を立てていたが、強化のおかげか脚に痛みはない。
まだいける 魔獣から尾を引き抜く。
ズルッと音がして、魔獣の脳髄が穴から零れ落ちる。
正面から突っ込んで来てくれたお陰で脳天を上手く貫けたようだ。
目の前の一匹を始末出来た事を確認すると、そのまま残りの魔獣がいるはずの方向へと目を向ける。
胴体が潰れ既に死体となっているのが一体。
脚が折れ、動けなくなっているのがもう一体。
どうやら、二体がクッション代わりになったことで先の一体だけはほぼ無傷で初撃を切り抜けられていたようだ。
脚の腱に力を入れ、まっすぐに生き残りの魔獣へと突っ込む。
魔獣は身体を捩って避けようとするが遅い。
脚の折れた状態でろくに動けるはずもなく、そのまま尾針で脳天を一突きする。
魔獣は一瞬身体を痙攣させて、すぐに動かなくなる。
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