第13話
「パシ…パシ…」
アルバの声が聞こえる。
泥濘の中から這い出るように意識をゆっくりと覚醒させる。
「おはよう」アルバに声をかける。
疲れのせいか、頭は鉛の詰まったかのように重たく、ボーッとする。
ツッ 不意に声にならない絶叫を上げる。
背中のヒヤリとした感覚に、思わず叫んでしまっていた。
「起きた?」
アルバがいたずらっぽく笑いかけてくる。
やはりアルバだ。
僕の目覚めが悪いから、いたずらしたのだろう。
だが、おかげで完全に目が覚めたのも事実だ。
「起きたよ。ありがとう。」
でも、やっぱり少し癪なので、僕は少しぶっきらぼうに答える。
続いて、意識を外に向けると大地は一層赤々しく染まっていた。
太陽もすでに沈みかかっており、もうじき日が暮れるのであろう。
であれば、探索を再開する前に、食事を取らなくてはならない。
僕はアルバに声をかけ、二人で並んで食事の支度をする。
メニューは、干し肉と野菜のスープとカルボナーラだ。
寝起きには少し重いが、これからまた歩くのだ。
だからこそ、しっかり栄養を 摂らなくてははならない。
そんなことを思いながら、食事を済ませる。
片付けも済ませ、出発の準備は整った。
出発に向けて、魔力探知を改めて行う。
範囲を5kmに絞って探知範囲を少しづつ自分から広げていく。
5kmいっぱいまで範囲を広げたが、やはり魔獣の反応はない。
うん、やっぱりココは大丈夫だ。 そう思い、魔力を遠くへ霧散させていく。
何か、おかしい
霧散させた際の魔力が、何かに弾かれたような感覚だった。
そのまま、魔力探知を再度発動させる。
今度は、広く、浅く。
バチンッ と触れる感覚。
魔獣だ。ココから東に10kmほど行った位置に二体だ。
「アルバ!東に10km行った所に二体いた!!」
僕は叫ぶようにして、アルバに状況を伝える。
「離さないでね!」
僕はアルバの手をつかむと走り出し、跳躍する。
そのまま、背中に翼を生やすと皮膜を広げて大きく羽ばたきをする。
揚力が発生し、身体がフッと浮く。
アルバを引き寄せ、腕でしっかりとロックする。
アルバも事態を把握し、僕の腰に手をガッチリと回す。
そして、翼に魔力を纏わせ、皮膜を流れる気流を操作することで、揚力と推力を向上させると、一気に時速60kmまで加速する。
「・・・・・・・」
アルバが何かを言っているようだが、風切り音にかき消されよく聞こえない。
「ゴメン!よく聞こえない!」
僕が叫びながら伝えると、「詳細!教えて!」とアルバも叫びながら返してくれる。
確かに、詳細を伝える間もなく走り出してしまった事を思い出し、僕も叫びながら説明をする。
「敵は3体!!でも!探知出来たのは、地上に出ている奴だけ!
残りはわからない!
このまま!近くまで接近して、一気に片づける!
でも!もしかしたら気づかれたかも!」
「わかった!」とアルバも大きく返してくれる。
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