第9話

「大丈夫?」アルバが僕を気遣って声をかけてくれる。

「ありがとう。大丈夫だよ。周囲に奴らの気配も無かったよ」

緊張からか、アルバの方を向くことも出来ず地面を見つめたままにそう答える。

「よかった。」アルバも安心したかのような声を出すと、トスッと軽い音を立てながらその場に座る。


「喉…乾いたね。お茶飲もう?」

アルバが僕に向かって提案をしてくる。

確かに喉がカラカラだ。

たった5km。だが、そのたった5kmでこれだ。

このままではいけない。これでは持たない。

早く切り替えないと。

僕は意識を切り替えるためにも「そうだね。飲もっか。」とアルバの提案に乗る。


僕は持ってきた荷物の袋を開いて、ケリーボトルを探す。

お目当てのケリーケトルは大きいからすぐに見つかる。

ケリーケトルを取り出して、アルバに「お願い」と頼む。

すると、アルバは任せてと言いながら魔法で雪状の氷をケトルの中に出してくれる。

僕はケトルを地面に置き、下部へと指を入れ、魔法で火を出す。

そのまま「カップと茶葉の準備頼んでもいい?」とお願いをすると、アルバはうなづいて荷物を漁り始める。

僕がケトルへと視線を向けると、後ろからガサゴソと袋を漁る音が聞こえる。

そのまま、カポッと音がして茶葉の缶が開かれたのがわかる。

紅茶の優しい香りがわずかに風に乗って流れてくる。

アルバは順調に準備を進めてくれている。

僕も、集中しなくてはと思いケトルと火へと意識を向け直す。

そのまま少しすると、ケトルからコトコトと沸騰している音が聞こえてくる。

すると、見計らったように「出来た。」とアルバからも声がかかる。

どうやら彼女の方も、準備ができたようだ。

だが、思ったより時間がかかったのだなと考えながらアルバの方を向くと、いつの間にか小皿に砂糖漬けのフルーツまで準備されていた。

アレは僕がこっそり忍ばせておいた代物だ。

きっとカップを探すときに、目ざとく見つけたのだろう。

僕が非難の目を向けると、アルバはいたずらっぽく笑いながらVサインを向けてくる。

まぁ、いい。どうせ二人で食べようと思っていたものだ。

今回は許してあげよう。

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