第十八話「ファルナ・ジョゼール」

朝の会終了後に突然話しかけてきた女子生徒。その後私は彼女の正体をヴァレッタから聞いて知った。名はファルナ・ジョゼール。伯爵令嬢だ。

「まさかあの子がファルナ様だったなんて……」

昼休み、ティーナと二人きりの教室で私は嘆いた。

「知り合いだったの?」

正面にいるティーナ、もといエリナが聞いてくる。

「うん。小さい頃に一度だけ会ったことがあるの」

今になってよくよく思い返してみれば確かにあの時の面影がある。

私は溜め息をついた。

「悪いことしちゃったなぁ……」

「会ったことあるとは言っても一度だけなんでしょ?思い出せなくてもしょうがないわよ」

「フォローありがとう……」

「ところで、グループは決まった?」

それに対しエリナは何も言わず、話題を変えてきた。きっと曇ったままの私の表情を見てのことだろう。

私は首を振る。

「まだ。これからリルカ様達に声をかけるつもり」

「奇遇ねアタシもそのつもりでいるのよ」

「へっ?」

彼女の言葉に私はすっとんきょうな声をあげる。

「いやその、他の人達は?」

「私カルロ様やリリア様達と組みます!」

いきなりの豹変に驚いていると、エリナはすぐさまころっと表情を戻した。

「って言ったの。リリア達と組むのには猛反対されだけど」

「そうなんだ……」

「だからアタシ達とリリア達で四人、最後の一人はあの子で決まり!ってなわけであの子の方はお願いね」

「良いけどエリナは?」

「リリア達の方はアタシに任せてちょうだい」

エリナは自信満々に言うと教室を出て行った。

「大丈夫かな……」

リリアはともかくリルカがなんと言うだろうか。私は心配になりつつもファルナ様を探しに行くことにした。


彼女は学園の中庭の椅子に一人座っていた。私はその正面に立つ。

「ジョゼール伯爵令嬢」

「はっはい、えっと、なんでしょうか……」

「先程はご無礼を致しました!」

謝罪の言葉と共に頭を下げる。

「えっ!?」

「その、後で思い出しまして……」

「と、とりあえずその、お顔をお上げになって……?」

「わかりました……」

私は恐る恐る顔を上げる。そこには戸惑いの表情を浮かべているファルナ様がいた。

彼女の目を見て改めて謝罪する。

「本当に申し訳ございません」

「い、いえ!その、思い出してくれただけでも嬉しいです……!」

笑顔を見せる彼女に尋ねる。

「あの、今朝声をかけてくださいましたが、何かご用事でしたか?」

「そ、それなんですが、その、わたくし今日初めて学園に来て、まだ友達がいなくて、だから……」

言おうとしていることは察した。けれども私は敢えて彼女の言葉を待つ。

「い、一緒に、グループ、組んでくれませんか!?」

答えはとっくに決まっている。私はにっこりと微笑んだ。

「良いですよ。実を言うと私も声をかけようと思っていたところなんです」

「ほっ、本当ですか!?」

彼女の顔がぱあっと明るくなる。その表情がとても可愛らしい。ほんわかしていて癒される笑顔だ。

「カルロ様~!」

そこへ、ルベッカが慌てた様子で走ってきた。

「どうしたの?ルベッカさん」

「その、今さっき教室にティーナさんが入ってきたのですが明らかに元気がなさそうで。念のためお伝えしておこうかと」

「そう、ありがとう」

「ティーナさん、とは、聖女様の……?」

ファルナ様の言葉を肯定すべく私は頷いた。

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