第二十話「切れない絆」

突然前世の名前を呼ばれたアツミは目を見開いた。

「どっどうして私の前世の名前を!?」

「話は後!彼女をどうにかしないとあなた本当に断罪されちゃう!!」

「断罪!?まだちょっと理解が追いついてないけどわかった!」

彼女が承諾してくれて良かった。

私は視線をステイミーに戻し、語りかける。

「ねぇステイミー、あなたの目的は何?」

「あなたを排除して、本来の物語を紡ぐことですわ」

「えっ!?カルロちゃんのこと排除する気なの!?」

彼女の発言を聞いて驚いたアツミが叫ぶ。申し訳ないけどスルーしよう。

私は再び口を開く。

「それはたぶんあなたが『あの方』って呼んでる人の目的だよね?あなた自身はどうして私を排除するつもりなの?」

「……羨ましかった。あなたがティーナさんにとって一番の存在であることが」

「そっか。悪いけどその座は譲れないなぁ」

そう言うとステイミーは顔をしかめた。

「なんでですの」

「私これでもね、ティーナが、ううん、エリナが少しでも心を開いてくれるように頑張ってたの。彼女を救うために。彼女のことを理解して、少しでも彼女の心が救われるように」

「そっ、そんなの結局は自己満足ですわよ!」

「そうかもしれない。なんなら私は最初彼女に利用されてるだけでも良かった。でも」

今までにあったことを振り返る。少しの間だったけど、エリナの親友でいれて良かった。

「彼女に『親友』って言われた時ね、すごく嬉しかったの」

だんだんと熱いものが込み上げてくる。

「色違いのブローチ買ったり、歌劇同好会の台本を文芸クラブに依頼してくれたりもしてさ。今回のグループ決めだって当たり前のように私を頭数にいれてくれていた。それが、すっごく、嬉しくて……」

不意に、涙が頬を伝う。私は泣いていた。

「だからっ!だからね、私、エリナと親友っ、辞めたくないよぉっ……」

膝をつき、しゃくり上げながらも言葉を紡ぐ。視界は涙で何も見えなくなっていた。

「カルロちゃん……」

「アタシだってそうよ、ユイカ」

不意にエリナの声がした。

「エリナ……?」

見ると、教室の入り口近くに人影がある。それはティーナのシルエットによく似ていた。

そのままこちらに向かって歩いて来た人影はステイミーの前で立ち止まり、彼女の頬を叩く。

パァンと音が響いた。

「ティ、ティーナさん……?」

ティーナ、もといエリナは混乱している様子の彼女に向かって怒声を浴びせる。

「アンタねぇ、アタシの親友泣かしてんじゃないわよ!」

「えっ、いやあなた、カルロ様に失望したんじゃ……?」

「なに言ってるのよ。アタシはユイカじゃなくてアンタ達に『もういい』って言ったの」

「そ、そんな……」

彼女は膝から崩れ落ちた。エリナはそれを一瞥すると、私に向かって手を差し出す。

「ユイカ、大丈夫?」

立ち上がった私はそのままエリナに抱きついた。

「エリナぁっ!」

「なんで泣くのよ……まぁいいわ、思う存分泣きなさい」

「ありがどぉ~」

「はいはい」

そう言って背中を撫でてくれる。私は思う存分泣いた。

「良い話だぁ……」

アツミの声がしたのでそっちを見てみると、なんと彼女も感動の涙を流している。

「ちょっと、アンタまで泣くことないでしょ……」

エリナは僅かに呆れていた。

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