第二章「彼女達行きつけのお店」

第八話「休日は町中へ」

休日、私は町にやって来ていた。

子爵令嬢という身分は厄介だ。貴族なので面倒事を起こすと家に迷惑がかかる。

そして今の私は――

「すこしだけで良いからさぁ」

「えっと、その……」

見知らぬ殿方に絡まれていた。

見たところ彼は中流貴族のようだ。

学園の授業は男女別れているが、全く関わりがないわけではない。けれども少なくとも私は彼の顔を学園内で見たことは無かった。

恐らく向こうは私の素性を知らずにナンパしたのだろう。

まずいな。ここで瞬間移動魔法を使えば身柄がバレてしまう。

「そこの素敵なお方!そんな子より私にしませんかぁ?」

そこへ聞き覚えのある声がした。殿方は声の主を一目見るなり破顔する。

「君みたいに可愛い子に誘われるなんて参ったなぁ……」

私はわざとらしく驚いて彼女の名を口にした。

「あら、ティーナさんじゃありませんか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る