第13話 春子の力

 夕飯とお風呂を済ませた後、さくらは階段に上り自室に入った。白火はベッドに寝転がり、少女漫画を読んでいた。


「…白火!続き教えて…って何勝手に私のマンガ読んでるの!?」 

「そこから取ったんだよ、減るもんじゃねぇしいいだろ。さくらが来るまで暇でつまんなかったんだぜ。それより、話の続き始めるぞ」


 本棚を指差し、マンガを閉じてベッドに置き、さくらは白火の隣に座る。


「もう!借りたいときはちゃんと言ってね!

そうだった!そういえば、春子さんの力とか知らないし!夜行を倒すまで一緒にいるんだから色々教えてよね!あっ、白火の火って何で白色なの?火って赤とかオレンジだよね。なんで!?」 

「いっぺんに話すな!!」


 次々と質問責めにされ、苛立ちながら少し大きな声をだす。白火の声に驚き、びくっとする。


「ご、ごめん…」

「…ったく、せっかちだな。よく聞けよ、春子は"浄化の力"を持ってたんだ」

「浄化…?何それ?」


 分からない言葉に首をかしげる。


「悪い妖怪とか邪気を祓う力とか言えば分かるか?」

「うーん、祓う力って…?それと邪気とかってなんなの?」

「悪いものとかがなくなるとかそんなものだ!

邪気も分かんねぇのか?春子の生まれ変わりのなのに聞いて呆れるぜ」


 白火に呆れら、おもわずカチンとなる。


「あのね!そもそも、いきなり春子さんの生まれ変わりだ~なんて言われて色々分かるわけないでしょ!

夜行を倒せとか言われてもできるか分かんないし!教えてくれないと困るんだから!」

「あーそうかよ!分かるように説明してやるから、いちいち文句言うな!」


 (なによ!白火の言い方が悪いんじゃない!)


「邪気は人に害を与える心だ。そういうの悪いものが形になり集まって人に悪さをする妖怪とかもできたりするって春子に教えてもらったんだ。ここまで分かるか?」

「…う、うん、なんとなく…」


 あんまり理解はしてなさそうだが、話を続ける。


「…春子は霊力が高くて、その分、浄化の力は強かった。身体は弱かったけどな」


 白火は目を伏せ寂しそうな顔をする。


「春子さんって身体が弱かったの?」

「まあな。時々顔色が悪いときもあったし、身体も病弱で長くは生きられなかった」

「…えっ、そうだったんだの…私の前世の人なのに全然知らなかった」



 ──春子さん身体が弱かったんだ。夢で見た白火との約束も悲しそうな顔してたし…白火は辛くなかったのかな…?



「…白火は辛くなかったの?春子さんは長く生きられなかったんでしょ?寂しくなかったの?」

「……すげぇ辛かったし寂しいに決まってるだろ。でも、春子が生まれ変わってもう一度逢いに来るって言ってたから信じて待ってたんだぜ。まさか、こんな奴とは思わなかったけどな」


 さくらの方を見ていつもの調子に戻る。


「それ私の事!?白火の事心配して損した!そういえば、春子さんって何歳なの?」

「数え年で16って言ったぜ」

「16歳だったの!?もっと年上かと思った!」


 (春子さんって綺麗だし落ち着きがあるし、大人だって思ってた!)


「春子はさくらと違って品があるからな。そういや、さくらはいくつなんだ?」 

「悪かったわね!!今12歳で、3月には13歳になるよ」

「3月ってまだ先か…」


 壁にかかっているカレンダーを見て呟く。


「うん。私、桜が好きだから3月生まれで嬉しいの!」

「自分のことか?」

「違う!桜の花!可愛いし綺麗だから好きなの!」

「あーそっちか。さくらが自分のことが好きなんかと思ったぜ」

「もう!そういえば、白火の火が白なの教えて!」



 白火っていっつもこうなんだから!春子さんの話をしてた時、辛そうな顔をしていたからちょっとは元気になって良かった。気になったら、また聞いてみようかな。春子さん─私の前世の人の事を知りたいし。



「…なんだよ、にやにやして」

「だって色々気になるんだもん!白火の事とか少し知りたかったし!」

「オレの事聞いてもつまんねぇーぞ。だいたい前世の記憶で思い出せるだろ」


 あまり自分のことを言いたくないのか、めんどうに答える。


「それじゃあ遅いもん!最初会った時白火の事、分かんなかったし!だから色々教えて!」

「…めんどくせぇな。そんときになったらな」

「うん!その時は教えてよね?」

「それより、オレの妖術の事知りたいんだろ?」

「あっ!そうだった!」



 ──初めて白火に逢った時、ほんの少しだけど懐かしい感じがしたの。前世の事も、もちろんだけど白火あなたの事も少しずつでいいから知りたい。





 







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