第6話 敵の狙い

「そんで、夜行の事は思い出したのか?」

「ううん…白火の事ちょっと思い出せただけだし」


 (夢で春子さんが言っていたって白火の事だったんだ!う~ん、夜行とか分かんないし…)


「まだ、そこまで思い出せないよ!白火の事だってさっき思い出したばかりだし!それに私もう帰らなきゃ…」

「そんなに暗くねぇだろ。ちゃんと最後まで聞けよ!」

「もういいでしょ!?私は力なんてないし夜行は倒せない!前世とかそんなのよく分かんない!! 約束なんて春子さんと白火がしただけで、私を巻き込まないでよ!!私にはそんなことできないし無理!!さよなら」


(私に夜行倒せとかそんなのできるわけないでしょ!?私には関係ないし!今日は散々な目に合ったし早く帰りたい!!)


「おい…!!お前は春子の生まれ変わりでこの先夜行や他の妖怪に狙われるんだぜ!?何もさくら1人で戦えって言ってるわけじゃねぇよ!」

「もうほっといてよ!!」


 さくらは走りだし神社を去っていった。


「…ったく、あいつ」


 神社には白火1人だけ残された。



 

 神社の帰り道の森を歩いていると、空は少し薄暗くなっていた。


「はあ…これでやっと帰れる!白火ったらしつこいんだから!」


 一安心して、スカートのポケットにある桜色のスマホを取り出し見る。


「…え?もう5時なの!?お母さんそろそろ帰って来るし急がなきゃ!」


 (いきなり前世とかそんなこと言われてもよく分かんないよ!約束なんて私には関係ないもん!!

白火が強いんだから夜行を倒せばいいじゃない!)


 歩きながら怒りがふつふつと湧いてくる。


「私に出来るわけないでしょ!もう白火のせいでイライラする!ずっーと変なものは見えるしなんなの!?…もしかして、数珠をつけてから?」


 数珠をじっと見つめる。


「この数珠、私のおばあちゃんの形見だし…元々は春子さんの物だったのかな?同じのつけていた気がするけど…偶然だよね?いいや、考えるのやーめた!数珠外しちゃおう」


 外そうとした時、再び数珠の鈴が鳴り出す。


「…え?なんでまた鳴ったの!?」


 辺りを見回すが異変は見られない。少し強く風が吹いて木々が揺れただけだった。


「気のせいだよね!…そういえば白火が何か言っていたような?ううん、気にしないようにしよう!」 


 数珠を外そうとした時、嫌な気配がする。


「巫女ノ生マレ変ワリの娘!美味ソウダ!!」


 声がして後ろへ振り向く。


「えっ?ええっ!?ま、またなの…!?」


 1つ目で体は黒く球体のような形で左右に手が

生え3本の両手の指は鋭い化け物が襲いかかった。口は大きく鋭い牙が見え涎が出ていた。

さっきの化け物よりかは一回りぐらいは小さめだが恐ろしさを感じる。


(どうしよう!白火いないし…ううん、別に頼らなくても!…逃げなきゃ!!)


 逃げようとしたが恐怖に震え足が動けない。


「…や、やだあ!助けて!!」


 目を瞑ろうとした時、化け物は目の前に倒れ痛みにもがいていた。


「痛イ!!コノ娘を食エバ当分ハ長生キガ…」

「さっき後ろから殴ったのに元気があるな。

あ"?てめぇはさくらを食わなきゃ生きていけねぇのか?弱えな」


 化け物を鼻で笑い、右手に白い火を出し力いっぱい殴りつける。化け物は気を失い動かなくなった。


「…えっ?どういこと!?なんで白火が?」

「世話が焼けるな…オレがいなきゃ危なかったんだぜ?感謝しろよ」

「た、助けてくれたの…?どうして来てくれたの!?」


(さっきは、ああ言っちゃったしもう会わないと思ってたけど、白火がいなかったら私…)


「当たり前だろ。オレは鼻と耳がくし、さくらの匂いを辿ればすぐ分かるぜ。鈴の音もしたからよ。

それに言っただろ?春子の生まれ変わりなんだからこの先、夜行や他の妖怪に狙われるって」

「鈴って数珠のこと?さっきから気になってたけど、変なものが見えるのは何!?

…ええっ!私、狙われちゃうの!?そんなの嫌だよ!!その変なのも、夜行とかのなの?あーもう、わけ分からない!!」


 今の状況についていけず混乱する。


「落ち着けよ、話してやるから…お前はいちいち騒がしいな」


 呆れた目でさくらを見て、気を失った化け物を掴み説明をする。



は変なものはじゃねぇよ。って言うんだ。さくらが数珠つけて見えてんのは妖怪だ。ちゃんと覚えておけよ!

こいつは夜行の手下じゃねぇよ。夜行の奴ならがある。こいつにはから夜行とは関係ねぇし、ただの妖怪だ。ここまで分かったか?」


 説明を終え、化け物を白い火の妖術で燃やし跡形もなく消えた。


「…うーん、分かんないけど、数珠をつけてるから妖怪が見えるんだよね?いきなりそんな事言われても信じられない!!なんで、数珠つけて見えるの?」


(まだ分かんないことだらけだけど…妖怪の事とか分かんない…)


「その数珠は特別で、春子の霊力が込められているから、まだ力が目覚めてないさくらにも見えるんだよ」

「へぇ…そうなんだ…妖怪なんて見えても嫌だし、これから私、狙われちゃうんでしょ?やっぱり私が春子さんの生まれ変わりだから?」

「春子は霊力の高い巫女だったからその欲しさに狙ってくる奴らいるからな…

安心しろよ、さくらが力に目覚めるまではオレが守ってやるから」

「ええっ!?守ってくれるの?白火が?」

「なんだよ、オレじゃ不満か?だから暫くは世話になるぜ」

「えっええっ!?世話になるってことは一緒にいるってこと!?う、家に住むの…!?そんなの嫌!!」

「仕方ねぇだろ、さくらを守るんだし。夜行を倒すまで我慢しろよ」

「えっちょっと…!そもそもお母さんとお父さんになんて言えばいいか分かんないし、変な目で見られるじゃない!」


 (男の子と一緒に住むのは絶対に無理!!もう帰りたいよ!!)


「その心配はねぇよ、オレの姿は見えねぇから」

「私には見えてるじゃない!!とにかく無理!

神社に住めばいいでしょ!!」  

「あのなあ、神社にいたらさくらを守れないだろう!オレ達、妖怪はしか見えねぇんだよ、数珠外してみろよ、それで分かるぜ」


(それってどういうこと?)


「え?…うん」


言われた通り数珠を外してみたら、白火の姿は見えなくなった。


「…え!本当に見えなくなった!?」


 もう一度つけると白火の姿が見えた。


「これどうなってるの!?」

「だから、さっき言っただろ。数珠をつけたら見えるって頭悪りぃな」


 ムッとしながら言い返す。


「悪かったわね!!いきなりそんな事言われて信じられるわけないでしょ!?」


(もうなんなのよ、いちいち余計なんだから!)


「暗くなるし早く帰ろうぜ。さくら家どこだよ?」

「えっ!住むきなの…?夜行を倒すまでの間だけよね?」


(私、狙われてるみたいだから白火がいないと危ないし…それにさっきのにまた襲われたら怖いしな…それまで我慢するしかないのかな)


「倒したら出てってやるよ。それまでだ」

「…本当に?」

「男に二言はねぇよ」

「…じゃあ、それまでだからね」


 嫌々ながらもさくらはしぶしぶ受け入れることにした。

 

 

 





 















 

























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