第7話 一緒の生活
森を抜けた先にはいつも見慣れた住宅街が見えた。
「へぇ~世の中変わったんだな!春子といた時代とは大違いだな!」
住宅街を通り、周りの景色や人々を見て目を輝かせる。
(そっか、白火ってずっと祠にいたんだよね、本当に周りの人には白火が見えてないのかな?)
はしゃぐ白火を見て少し微笑ましく見つめる。
「着ているものとか全然違えな!見慣れねぇ建物ばかりだぜ!なあ、さくらの家って言うのはどこなんだ?」
「ここから歩いてもう少しのところだよ」
「そうか、早く行きてぇな!」
暫く歩くと一軒家が見えた。表札には「新山」とあり、家に着き再び聞く。
「…ねぇ白火、本当に家に住むの?」
「当たり前だろ。じゃなきゃさくらを守れないんだぜ?それにオレの姿は見えねぇと思うし心配すんな」
「そもそも同じ年頃の男の子と一緒に住むの嫌だよ!夜行を倒すまでの間だけだけど…」
「言っておくけど、オレはさくらより年上だぜ」
「えっ!?年上?私と同い年くらいに見えたけど違うの!?何歳なの?」
「妖怪だから成長が遅いんだよ。外見はさくらとそんな変わんねぇけど、年なんて数えてねぇから分かんねぇけど」
「何よりそれ…知りたかったのに!」
少し呆れた目で見ていたら、周りに怪訝な目で見られた。
白火の姿が見えないため、さくら1人で会話しているように見えるからだ。
通りすぎた女子高生2人にヒソヒソと話され笑われいてしまい余計に顔が赤くなる。
「オレの姿は見えねぇって言っただろ」
「……本当に見えないだね」
さっきより声を小さくしヒソヒソと話す。
「だいたい、オレみたいなのがいたら周りの人間だって気づくだろ」
「た、確かに…」
気が重いまま家のドアを開ける。
「ただいま、お母さん」
「ここがさくら家か、世話になるぜ」
「…変なことしないでね」
「分かってる」
2人で話してると母親がやってくる。
「さくら、お帰り。今日は遅かったじゃない。もう18時近いし、いつもは家にいるから」
「えっと、学校で忘れ物しちゃってあはは…」
(お母さんに神社に行ってたなんて言えない!!白火と会ったことも信じて貰えないし…!)
「遅くなるならちゃんと連絡しなさいよね。お父さんが帰ってくる前に先にお風呂入っちゃって」
「ごめんなさい、はーい」
母が去った後、二人はまた小声で話す。
「お母さんには見えてないんだね…良かった」
「だから心配ねぇって」
素足の白火の足を拭き、手洗いを済ませた後は2人は自室に行きドアを開ける。
「ここがさくらの部屋か~!色々あるんだな、面白れぇ!」
「住ませてあげるんだから、大人しくしててね!」
「分かってるつーの、いちいちうるせぇな」
「もう!!変なことしたら追い出すからね!」
さくらの小言に耳を傾けずベッドに腰をかける。
「ちょっと!勝手にベッドに座んないでよ!」
「なんだよ、いいじゃねぇか!守ってあげただろ!妖力使ったからこの姿はきついな…」
ポンッと白い煙が出て、白い子狐の姿に化ける。
「…かっ可愛い!!」
目を輝かせ白火を抱きしめ頬擦りをする。
「おい!何するんだよ!?離せよ!!」
「可愛い!可愛い!!はあ~モフモフ!」
「聞いてるのか!?会話しろよ!!」
さくらの手から逃れ、少年の姿に化ける。
「えーなんでそっちの姿になるの!可愛かったのに!!」
「ベタベタ触って気持ち悪りぃんだよ!オレの気持ちにもなれ!!」
「なんでよ!住ませてあげるんだからいいでしょ!ここでは私の言うこと聞いてよね?私の部屋にいる時は狐の姿になって!」
「絶対触るからなりたくねぇよ!狐の時と態度が違くねーか?」
「いいじゃん!狐の方が好きだもん!可愛いし!ねぇ、もう一回なってよ!」
「嫌だって言ってるだろ!!」
言い合いをしてると、一階から母の呼び声する。
「さくら、何騒いでるの?もうお風呂入っちゃいなさい!お父さん帰ってくるから!」
「はーい、今行く!!」
返事をして白火の方へ向く。
「とにかく!部屋にいる時は狐の姿でいてよ!私、お風呂入るから!」
「…めんどくせぇな。早く行ってこいよ」
ドアを閉めるさい、念を押して言う。
「部屋の物勝手に触らないでよ!」
「分かったからもう行けよ!!」
風呂を済ませ着替えた後、髪をタオルで拭きながらリビングに行く。
「はあ~!お風呂さっぱりした!」
「さくら、夕飯出来てるから」
「うん!お腹すいてた…って!!」
(は、白火!?なんでリビングにいるの?)
白火がリビングに居て、物珍しそうに周囲を見ていた。
「どうしたの?そんな顔して」
「あ、ううん!なんでもない!」
(な、なんでいるの!?)
驚いてると、玄関から父の声が聞こえリビングのドアが開く。
「ただいまー」
「お父さん、おかえりなさい」
「あっ…お父さんおかえり」
「さくら、どうしたんだ顔色悪いぞ?」
「ううん…なんでもないよ!」
「さくらったら変なのよね。夕飯とお風呂どうする?」
両親が話してる隙に白火の腕を掴み、隅に移動する。
「何してるの!?大人しくしてって言ったじゃない!!」
「ずっと部屋にいてもつまんねぇし。別にいいだろ?」
「勝手な事しないでよ!お父さんにバレたらどうするの!?」
「見えてねぇよ。ホラッ」
父の顔に手を振ったり、肩を叩いてみたが白火の姿は見えておらず気づいてない。
「だ、大丈夫なんだ…」
「気にすんなよ」
「とにかくじっとしててね!」
返事はなかったが、夕飯の間は大人しくしていた。
夕飯を済ませ、自室に戻るとさくらはベッドに飛び込む。
「はあ~疲れた…白火との生活、落ち着かないよ…」
「仕方ねぇだろ。夜行を倒すまで我慢しろよ」
ベッドに腰掛け、さくらの方を見る。
「もー!夜行とかそんなの分かんないよ!
…あれ?よく見たら白火の目変わってる!?」
「今頃気づいたのか?遅せーな」
「だって神社にいた時、目違ったじゃない!なんで!?」
神社で会った時の白火の瞳は黒く縦長に細くなっていたが、今は瞳は黒い丸くなっていた。
「オレは怒ったり、戦う時は瞳が細くなるんだよ。狐の妖怪の特徴とかなんだとよ。
それだからすぐ表情を読まれちまうし、戦う時に少し目が良くなるくらいだな」
(白火って目が変わらなくても表情とか分かるけどな…)
「ふ~ん、そうなんだ!」
起き上がり近づいて、白火の顔を両手にあて目を覗きこむ。
「おい!近けぇーよ!」
頬が赤くなり、目をそらす。
「だって気になるんだもん!どうな風に変わるか見てみたいし!」
「やめろよ!!見せ物じゃねぇんだぞ!」
さくらの両手を離し、顔が赤いまま背ける。
「なんでよー!ケチ!」
「…そのうち分かるからいいだろ!」
「何よちょっとくらいいいじゃない!」
「それよりオレは疲れて眠いんだよ…どこで寝ればいいんだ?」
「うーんと、何かいいものないかな…」
探していると、本棚にうさぎのぬいぐるみを入れてあるバスケットを見つけた。
「ねぇ、白火!これでいい?」
「なんだこれ?かごか?」
「そう、バスケット!これで狐になって寝てよ!」
暫くじっと考えたが、しぶしぶ頷いた。
「分かった、これで寝てやるよ。そのかわり寝てるときに触るんじゃねぇーぞ」
少し睨みつけて念を押して言う。
「う、うん…」
(ちょっとぐらい触ってもいいじゃない!)
「オレは寝るぜ」
「おやすみ」
──私、これから白火との生活上手くいくのかな…生意気だしわがままだし!
早く夜行とかを倒して出てって貰うんだから!
さくらはそう決心し眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます