第8話 変わる日常

 さくらと白火が神社を去った後の暗い夜に1人の男が現れた。

髪は痛んでおり至極色で、顔半分には布をつけていた。

その紋様はさくらを襲った妖怪とであった。

ボロボロの着物を着た奇妙な格好をした青年が鳥居にいた。



「…とうとうを封印した憎い女の生まれ変わりが現れたか…」


 手にを集め、忌々しく言う。


「挨拶代わりに送った奴では役には立たなかったようだな。思わぬ邪魔も入ったことだが、こんな奴でも違う形で役立つかもしれないし、残骸だけでも集めておこう」


 黒い影のようなものは白火が倒した妖怪の念であり集める。


「…さて次はどう痛ぶってやろうか。私の計画は邪魔はさせない」


 男は音もなく神社へと消えていった。




 ──翌朝。


 春子と白火が指きりをしている夢を見る。

は白火に凶悪な妖怪─夜行を倒そうって一緒に約束してそれから… 



ジリリリ!!


けたたましくスマホのアラームが鳴る。


「…おい、起きろよ」

「う~ん、後5分…」

「おい!!いい加減起きろよ、さくら!!」

「うわあああああ!?」


勢いよく布団をはがされ混乱する。


「は、白火!?なんでいるの!やっぱり昨日の事は夢じゃなかったの!?」

「まーだ、寝ぼけてるのか?オレと一緒にいることもう忘れたのか?本当、先が思いやられるぜ」

 

 白火はため息をつき、呆れた目で私を見る。

 その態度がさらに私をイライラさせてくる。

 

「…忘れてないよ!!夜行とかいう妖怪を一緒に倒せばいいんでしょ!?そしたら白火が出てってくれるって!」 

「忘れてなければいいんだぜ。それより早くこれ止めろよ!さっきからうるせぇし」


 スマホを指差し、アラームを止める。


「切ったよ…ってもうこんな時間!?学校遅刻しちゃう!!」


 画面には8時15分と表示され慌てて支度をする。


「朝から騒がしいな…なあ、さくらが持ってるそれなんて言うんだ?」

「これは、スマホ!それより着替えるから早く出てってよ!」

「別にお前の着替えなんか興味ねぇよ」

「いいから!!早く!!」


 白火を無理矢理部屋に追い出し勢いよくドアを閉める。


「ぜったい覗かないでよ!!」

「うるせぇな!早くしろよ!」

「…何よ全く!夜行なんか倒してすぐに追い出してやるんだから!!」


 文句を言いながら制服に着替え、髪紐と鞄を持ってドアを開く。


「着替え終わったのか?」

「うん…白火も学校行くの?」

「じゃなきゃ、さくらを守れねぇだろ。仕方ねぇからついてってやるよ」


(また、昨日みたいな妖怪に襲われたら嫌だし夜行倒すまでの間は我慢しなきゃかな…はあ…)


「…分かった。その代わり約束して!学校では変なことしないって!大人しくするって!」

「オレの姿は見えねぇから大丈夫だろ」

「もう!困るんだから!」


 1階から母の呼び声がする。


「さくらー!学校行く時間でしょ!急ぎなさい!!」

「はーい!今行くから!白火、大人しくしててね!!」


 白火の手を引き階段を下り1階に行く。


「珍しいわね、自分で起きるなんて。いつも起こしても起きないのに」

「あっ…うん!目が覚めちゃって!」


 (白火に起こしてもらったなんて言えないけど!)


「お弁当置いといたから早くしなちゃいなさいね。お母さんはもう仕事に行くから」

「ありがとう!お母さん」



母との会話を終え、洗面所に行き髪をとかし髪紐をつける。


「あっ!数珠どうしよう!」


 昨日数珠をつけたまま寝てしまい、まだつけたままであった。


「数珠はつけておけよ。それないとオレの姿見えねぇだろ」

「そうだけど!先生に見つかったら怒られちゃうし!」

「腕につけてなくて身につけていればオレの姿は見えるぜ。どっか入られねぇのか?」

「うーん、制服のポケットしかないし…白火が持っててよ!」

「オレが持っても意味ねぇだろ。ぽけっととかに入れとけよ!」


(仕方ないけどスカートのポケットに入れるしかない!)


「ポケットに入れるけど、先生に見つかったらどうにかしてよね!」

「おうよ。それより急がなくていいのか?」

「うわっ!やっば!!」


 洗面所を出た後、弁当を鞄に入れ「いってきます」と声を掛け学校へ走っていった。





 学校にはギリギリ間に合い何とか遅刻せずには済んだ。休み時間、さくらはどっと疲れていた。


「はあ~小テスト疲れた…朝から大変だった」


 (白火は大人しくてるから良かったけど、身体の疲れが…)


「さくらちゃん、朝は間に合って良かったね。小テストお疲れ様!」


 左側に水色のピンをした黒髪で鎖骨くらいの長さのおさげをした少女が声を掛ける。


「まーちゃん、ありがとう…!」


 少女はニコッと笑いさくらの頭を撫でる。


「よしよし。難しかったね、今回の小テスト。

私、良い点取れるかな…」


 頭を撫でられて幸せそうな顔のさくらを白火はロッカーに寄りかかり呆れて見ていた。


「よぉーす!真菜実まなみ、さくら!」


 後ろから勢いよく声を掛けられ肩を叩かれる。


「ちさちゃん!」


 さくらは顔上げ後ろに振り向く。


千智ちさとちゃん!」


 真菜実が千智に声を掛ける。

 ベージュ色の髪に外はねしたショートヘアで前髪を後ろにオレンジのピンで止めた少女─千智が元気よく返事をする。


「おう!2人で何の話してたんだ?あたしも混ぜてくれよ!」

「あっごめんね!千智ちゃんバレー部だし、いつも部活の子達といたから…」

「まーちゃんとね小テストの話をしてたの」

「いいよ、気にすんなって。なるほどなー小テスト難しかったよな。あたしも赤点かもな」

「うん、私も赤点かも…ちさちゃん、一緒に頑張ろうね!同じ居残り仲間として!」


 テストの話題で少し落ち込むが、千智と一緒なら頑張れるような気がして元気を出す。


「そん時は2人で頑張るか。さくらっていっつも赤点だろ?また、居残りだろうし。あたしも人の事言えないけど」

「千智ちゃん、言い過ぎだよ!さくらちゃんだって頑張ってるんだから」

「だ、大丈夫、まーちゃん…私頑張るから!」


 (勉強やだな…居残りじゃありませんように!)


 

 さくら達3人が楽しそうに話しているのを退屈そうに白火は見つめていた。

やがて予鈴が鳴り、真菜実と千智は席に戻っていった。


「さくら、あの2人は友達なのか?」

「そうだよ!まーちゃんとちさちゃんは友達だよ」


 白火の姿は見えないため声をひそめて話す。


「へぇ、そうかよ。ここにいてもつまんねぇからオレ、他のところ見てくる」

「いいけど、絶対に変なことしないでよ?」

「うるせぇな!オレは指図されるの嫌いなんだよ!」


 少し強い口調で言い、授業が始まる頃には白火は教室から出ていった。















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