第5話 白火との出会い
──あの子助からないかも!!
呼び掛けたけど、怖くて動けなかったのかな…?
「こんなもんか?夜行の手下ってやつは」
少年の声がして、目を開け顔をあげる。
化け物の手を右手で受け止め、勝ち誇った顔をしていた。
「あの子無事だったんだ、良かった…!」
安心し、胸を撫で下ろす。
「オレがこんな奴に負けるかよ!!よくも祠壊しやがって!」
「ウルサイ、オ前ニハ関係ナイダロ!!」
「こっちは関係おおありなんだよ!!祠壊した仮を返すぜ!おらよ!!」
化け物を押さえた手を離し、勢いよく左足で蹴っ飛ばす。
「…グッ、オ前強イ…」
化け物は体制を崩しよろける。その隙に少年が
とどめを差しに走り出す。
「これで覚悟しろよ!!」
少年は右手に白い火を出し手にまとわせ、化け物の顔におもいっきり拳を振り、全身が白い火に包まれる。
「アアアアッ!!!熱イ…夜行様…!!」
化け物は叫び消えていった。
「…す、すごい!!やっつけてた!!はあ~助かった…」
襲ってきた化け物を少年が倒してくれたことにより安堵する。
(あの子どこから来たんだろ?私が神社に来た時は誰もいなかったし…それに人じゃない!?耳と尻尾あるし触ってみたい!…じゃなくて色々分からないことだらけだよ!!)
「たいしたことねぇな、夜行の手下は…おい、そこのお前、春子の生まれ変わり!」
少年は近づき話しかける。
(えっ!?私が春子さんの生まれ変わりらしいけど…なんで知ってるの!?)
「…わ、私のこと…?」
嫌な顔をしながら自分に指を指し答える。
「お前以外誰がいるんだよ、春子の生まれ変わりならあんな雑魚に倒せるだろ?オレの事、本当に覚えてねぇのか?」
「…あのねぇ!!私は春子さんの生まれ変わりらしいけど、名前は
(なんなのこの子!!口悪いしムカつく!!強いからって調子乗らないでよ!)
立ち上がり少年を睨みながら答える。
「ちっ、めんどくせぇな…オレは
(舌打ちした!態度わっる!!しかもいきなり呼び捨て!?)
「白火っていうんだ変わった名前…えっ!?ええっ!!白火が祠にあった狐さんなの!?なんで祠にいたの?…もしかして悪さとかして封印されたとか…?」
「いちいちでけぇ声出すなよ、うるせぇな。
さっきのあいつ…夜行の手下の奴が祠壊しやがって出られたんだ。
あのなあ、オレは悪さをして封印されたわけじゃねぇよ!祠に封印されたのは春子との約束を守るためだ!!それと、オレの事呼んでただろ。この神社、人なんか滅多に来ないぜ」
(春子さんとの約束?白火って悪そうだから封印されたわけじゃないんだ…呼んでいたの見られたの恥ずかしい!!ん?白火って名前、何か思い出せそうなような…)
「…よく分かんないよ!まだ聞きたいことがあるし!白火は男の子なの?髪すっごい長いし、オレって言ってるし…あと、口悪いし着ている服?すっごく変だよ!それと夜行って何!?さっきの変なのも言ってたけど…春子さんの約束って?」
「順番に話すからいっきに聞くなよ…なんだよ、男が髪伸ばしたっていいだろ!文句でもあるのか?これは着物って言うんだよ!さくらが着てるもんの方が変だぞ!…ったく、なんでこんな奴が春子の生まれ変わりなんだよ!何一つ覚えてねぇし!」
さくらに言いたい放題言われ苛つき出す。
「そこまで言ってないでしょ!!これはセーラー服って言うの!学校の制服!!白火みたいな着物着てる人なんか見たことないよ!それより夜行とか春子さんの約束とか教えてよ!どうして、私が春子さんの生まれ変わりなの?ずっと知りたかったの!!」
白火は顔をしかめながら嫌々話し出す。
「…言ったところで思い出せるのか?オレの事も知らなかったくせによ…仕方ねぇな、教えてやるよ。夜行っていうのは、すげぇ悪い妖怪で春子が封印したんだ。さっき、オレが倒した妖怪は夜行の手下で夜行本人じゃねぇよ。春子との約束は、春子が生まれ変わったら、共に夜行を倒そうってことだ。何か思い出せそうか?」
(春子さんとの約束って夜行とかいう悪い妖怪を一緒に倒す約束なんだ…そんなこと言われてもどうしたらいいの?…なんで、そんな約束するの!?)
「…約束とか夜行とか色々言われても分かんないし、思い出せないよ!なんで私がそんなことしなくちゃいけないの!?白火だけでいいじゃない、強いんだし!なんで私が春子さんの生まれ変わりなの…!!」
「さくらが春子の生まれ変わりで間違いはねぇんだよ。見た目は似てねぇけど、春子と匂いも似てるし。同じ髪紐と数珠も持ってる…オレだけでも夜行を倒せたらいいけど夜行の姿は知らねぇし、春子の生まれ変わりであるお前しか分からねぇからどうしようもねぇんだよ」
「…えっ?夜行のこと知らないの?この髪紐と数珠は私のおばあちゃんの形見だから!春子さんのと同じものかどうか分からないし!それに、私は力とかないし夜行なんて知らないんだから!」
(白火が知ってるんじゃなかったんだ…私もだけど!)
「悪かったな、春子が1人で封印したからオレは見てねぇんだよ…さくらの持ってる髪紐と数珠は春子の物で間違いはねぇよ。春子の匂いが残ってるし一緒にいたから分かるぜ。数珠つけていてオレの姿見えてんだから今は力がなくてもそのうち目覚めるかもしれねぇし」
(さっきから白火の言ってること全然よく分かんない!!春子さんと同じ匂いって何?ずっと変なものばっかり見えるけどそれがなんなの?あーもう、頭がぐるぐるする!!)
「…それに春子が言ってたんだ、生まれ変わってまた逢いに来るって。自分の姿が変わっても必ずオレに逢い行くって」
白火は目を伏せ悲しげな顔で言う。
「逢いに行く…?」
何か思い出せるかもしれないと呟いてみる。
(その言葉だけ凄く懐かしく感じる…でも、何にも思い出せない…そろそろ帰らないと!)
「…やっぱり何にも思い出せないし白火の言ってること全然分かんない!私、帰るから!!」
「おい!まだ話しは終わってねぇよ!!勝手に帰るな!」
「ついてこないでよ!!」
後ろを振り向き睨みつける。
(夢の事が思い出せると思って来たのに、なんでこんな目に合わなくちゃいけないの!?白火の態度も悪いし!早く帰ろう!)
「待てよ、さくら!!」
「ちょっと離してよ!私、帰るんだから!」
腕を掴まれ身動きができなくなる。
「いい加減にしてよ!!しつこい!」
腕を振りほどこうとした時、数珠についてる鈴が鳴った。鈴がなった時、記憶が流れ出す。
『──約束です。私は生まれ変わって貴方に必ずまた逢いにいきます。私の姿は変わりますけど、白火にきっと逢いにいきます…それまでこの神社を頼みます』
──そうだ、私、約束したんだ。
白火ともう一度逢うって。
貴方と逢うために私は生まれ変わったんだ。
「…少しだけど思い出したよ。白火の事…ずっと私の事待っててくれたんだ」
「やっとオレの事思い出したか…遅せぇよ」
白火は困ったようにふっと笑い、さくらの腕を離した。
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