第4話 約束を思い出すため─敵の襲来─
家を出た瞬間、周りに変なものが見えた。
「ええっ?な、何あれ!?私、おかしくなっちゃったの!?」
電柱には宙に漂う半透明の何かがいたり、道端にはこの世のものではないものばかりがいた。
それらは宙に浮いたり、ただずんで歩く人を観察したり、人々の肩や頭に乗っかったり後をつけたりとしていたが、周りの人々には見えておらず平然としていた。
(…私、疲れてるのかな?今まであんなの見えたことなかったし!!周りの人達は全然気にしてないし…私だけ見えてるの!?)
「な、なんで…!!私、どうしちゃったの!?」
驚いて大きな声を出し、周囲には怪訝な目で見られた。我に返り恥ずかしくなり赤面する。
(今は凄く気になるけど、早く神社に行かなきゃ!!夢の事を知るために!)
神社の行く道は自然に分かった。まるで導かれるように。
神社に続く森を通ってハッとした──私、小さい頃にここにきたことがある…。
昔、迷子になってそれで…ここを通ったような…。う~んと…って今はそれより早く行かなきゃ!!
春子さんが言っていた「彼」って誰なんだろう?
白火って言ってような…?聞けば分かるのかな?どんな人なんだろう──
「よーし!ここを抜ければ神社に着く!夢の事も知れる!!」
期待を膨らませ、胸を踊らせながら進む。鳥居をくぐり神社へたどり着く。
「神社に着いたのは良いけど、そういえば彼って誰なの!?肝心な事、春子さんに聞ければな…呼べば分かるかな?あの、誰かいますかー?」
呼びかけてみたが神社には
「…き、きっと何か分かるはず!!…ちょっと見て帰ろうかな!さっきから変なものばっかり見えるし…私、どうかしちゃったのかな…?」
狛犬を通りすぎていったら、狐の祠が見えた。
「あっ、狐の祠がある!夢の事分かるかな?」
少し期待しながら祠の前にしゃがみじっと見る。
木で作られた祠で中には狐の像がある。像の前には、しめ縄があり年月がかなり経っているのかボロボロであった。
「…なんだろう、とても懐かしい感じがする」
───初めて見るはずなのに。
ううん、そうじゃない気がする。この子なのかな私を待っていたのは──
無意識に手を伸ばし祠の狐に触れようとしていた事に気づき我に返る。
「…わあっ!?わ、私、何しようとしてたの!?祠に触っちゃ駄目じゃない!もう帰ろう…」
慌てて手を引っ込め帰ろうとする。
「結局、なーにも分かんなかったな…早く帰って寝よう」
期待していたが裏切られた気持ちになり、立ち上がる。
──リン。数珠についてる鈴が鳴り、後ろに黒く大きな影が覆い被さる。
「えっ?また、鈴が鳴ってる!?なんなのこれ!あれ?こんな暗かったけ?まだ、明るかったはず…」
なんだろう、少し嫌な予感はする…気になって後ろを振り向く。
「……ひっ!?」
振り返ったら、目の前には大きな化け物がいた。
「見ツケタ、アノ方ガ言ッテタ。巫女ノ生マレ変ワリの娘」
化け物は体が大きく見下ろしながら、不気味な声を出し近づいてくる。恐ろしい姿で左右に2本ずつ手が生えていて、身体は丸くそこらじゅうに目玉がについている。
真ん中には顔らしきものがあり、目は真っ黒で口元はニヤリと笑っている。顔の額には紋様らしきものがあった。
「…な、何あれ!?気持ち悪い!こっちに来ないでよ!!」
後ずさり祠の横にしゃがむ。
「コノ娘ヲ殺ス。アノ方ノ命令」
(あの変なものは何!?…今、私を殺すって言ってた!?ど、どうしよう…!誰もいない!!)
「…やだよお…誰か、助けて…!!」
泣きながら震えた声で言うがここには誰も来ない。
──なんで、私がこんな目に!?夢の事を知りたいだけなのに!!
「覚悟シロ、命令ダカラナ!!」
化け物が大きく手を振り下ろす。
恐怖に震え強く目を瞑り、とっさに願う。
(──お願い、祠の狐さん助けて!!)
────ガッシャン!!
暫く沈黙があり、恐る恐る目を開けて見たら身体には外傷はなく無事だった。
「…な、なんともない…?」
目を開け辺りを見回したら、隣にあった狐の祠が壊されて無残な姿になっていた。
「……っ!!」
驚いて口を押さえる。
(私じゃなくて、祠があたったんだ…助かった…でも、ごめんなさい…)
安堵はしたが、罪悪感が残る。
「…チッ外シタカ。次ハ狙ウ」
「え?…見逃してくれないの!?」
「オ前ヲ殺スマデナ!!」
化け物がもう一度大きく手を振り狙う。
「──お願い、誰か助けて!!」
誰も助けになんか来ないが、大きな声で叫ぶ。
叫んだ同時に白い煙が周りを覆う。
「…!?ナンダコレハ…何モ見エナイ…」
化け物は手を振りかざすのをやめ周りを見回す。煙の中にもう1人、人影らしきものを見える。
「オ前ハ誰ダ!?邪魔スルナ!!」
呼び掛けるが人影の返事はない。
(…あれ?私、なんともない?…助かったのかな?)
少しずつ目を開け、状況を確認する。
「…えっ!?煙?どういう事!?」
顔を上げると見知らぬ少年が少し前にいた。
「…ええっ!?あの子誰!?ここには私1人しかいなかったはずだよね…?」
少年がこちらに気づき振り向く。黄色く鋭い目でこちらを見る。
見た目は同い年か少し上くらいで、頭には狐耳があり、長い白髪を真ん中の位置に赤い髪紐でまとめ、狩衣のような着物と膝丈くらいの赤い袴から覗く白い尻尾があった。
「…お前が春子の生まれ変わりだろ?オレ、待ちくたびれたんだぜ」
少年は話しかける。まるで知っているかのように。
(私、あの子全然知らない!!それに変な服来てるし…頭に耳があるし!あの子は人間なの!?)
「無視スルナ!!」
化け物が少年にめがけて手を振りかざす。
「あっ…危ない!!よけて!!」
呼びかけたが少年は避けない。むしろ余裕に満ちた顔をしている。
────もう駄目かも!
そう思い、怖くてとっさに目を瞑り顔を背ける。
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