第21話 大鏡の噂

 …寂しいよ。友達がほしい。1人は嫌…


 夜、暗い学校に2階の踊り場にある1人の女子生徒の姿が現す。


「…なれば、力を与えよう。友人もできるかもしれないぞ」


 鏡の前に顔半分の布を隠した奇妙な男─夜行

女子生徒に話かける。甘い言葉に誘われ、誘惑に負ける。


「…欲しい、友達が欲しい。ちょうだい」

「よかろう。私の力を思う存分使うがよい」 


 夜行から、力を貰った女子生徒は黒く闇に包まれニヤッと笑った。





 ──翌日の休み時間

友人の宮口真菜実みやぐちまなみと話していると、もう1人の友人の西崎千智にしざき ちさとが元気よく話かける。


「よぉーす、さくら!真菜実!面白い情報手に入れたぞー!」

「なになに、ちさちゃん!教えて!」

「千智ちゃんの事だから、怖い話だったりして…」


 怯える真菜実にお構い無く、話を続ける。


「真菜実は、ほっんと怖がりだなー!学校の七不思議くらい怖くはないだろ?」

「怖いよ!幽霊とか苦手だもの…」

「ちさちゃん、早く話教えて!気になる!!」

「さくらちゃん、すごいね…」


 好奇心旺盛なさくらは目を輝かせて待つ。真菜実は怖いので耳を塞いで背を向ける。


「この中学の七不思議の1つ、2階の踊り場に大きい鏡があるだろ。夜になるとそこに鏡の中から1人の女子生徒が現れて、友達の欲しさに通った人を鏡に引きずり込むって噂なんだぜ」 

「うわっ…こわーい!鏡に引きずり込まれるなんて嫌だよ!その女子生徒はなんで友達が欲しいの?」


 さくらも怖がりながら気になる様子だ。


「うーんと、噂だと…クラス馴染めず友達がいなくて、事故で亡くなったとかだったけな…確か、そうだった気がするな」

「…そうだったんだ、寂しいよね、きっと…」

「…ねぇ、千智ちゃん、話は終わったの?」


 背を向けていた真菜実がこちらに振り返り、耳を塞いでいた手を離す。


「あー終わったぜ!真菜実は怖がりだもんな」

「ごめんね、まーちゃん!大丈夫だよ!」

「さくら、あくまでも噂なんだし気にすんなよ!最近、いなくなった生徒達とかいるけど噂とかは関係ないと思うし」

「…確かに、先生がHRで言っていたよね。まだ、分からないとか…早く無事に見つかるといいね」

「うん、そうだね!噂とかは関係ないと思うし。

2階の踊り場通るの怖いな…気をつけよう…」


 少し怖がるさくらに千智はからかい、真菜実が止めチャイムが鳴り、休み時間は終わった。


(後で、白火や影里くんにも教えてあげよう!2人はどんな反応するかな?大鏡の噂とかいなくなった生徒達って夜行とは関係ないよね…?)




───その頃、同時刻の休み時間の時、白火と妖怪の姿の信也は2階にある踊り場に来ていた。


「なんでお前まで着いてくるんだ。邪魔だ」

「信也、そんな事言うなよ!オレ達ダチだろ!」

「いつ俺がお前を友達だと言った?勘違いはやめてくれ」

「つれねぇーこと言うなよ!おっ!ここが噂の大鏡ってやつかでけぇな!」


 鏡に手をあて驚きながら、目を輝かせた。自分の姿が鏡に映りはしゃいでいる白火に信也は呆れる。


「すげー!全身映ってるぜ!!別になんの妖気も感じねぇぞ?噂は本当なのか?」

だけだ。最近、生徒の行方不明が増えてるし、夜になると鏡の中に女子生徒の霊が現れ、人を引き込む噂が広まっている。僅かだが妖気も感じる。間違いはないだろ」

「まあ…匂いを嗅いでみると確かに妖気はあるな」


 信也も鏡に手をあて、少しばかりの妖気を感じ取った。


「この嫌な妖気…夜行の可能性が高いだろう」

「昨日の事で夜行の匂いは覚えたしよお…確かに嫌な感じはするな」


 注意深く匂いを嗅ぐと、夜行の匂いが少し残っていた。


「夜行のやろ…今度は何考えてやがんだ?クソムカつくぜ!!昨日はオレをあんな目にしやがって!!ツケは返さねぇとな!」

「あいつの目的が何なのかよく分からないが、早くこの鏡をどうにかしないとだな」


 2人で鏡をどうするか考えていると、チャイムが鳴った。


「…後でまた調べるか」

「しゃーねぇよ、信也。また、来ようぜ」


 信也と白火は教室へ戻ることにした。 


 二人が去った後、恨めしそうに鏡の中から女子生徒が映っていた。





──夜の七時過ぎくらいに、自室でさくらと白火は大鏡の噂を話していた。


「白火、知ってる?今日ね、ちさちゃんから大鏡の噂の話を聞いたの!」

「知ってるぜ。鏡に女子生徒の幽霊が出て、人を引き込む話だろ。信也から聞いた」

「そうだったの!なーんだもう知ってたのか~つまんないのー!」



 さくらはベッドでスマホをいじり、白火は子狐姿になって寝転んだ。




──その頃、夜の学校では。


「やっべー!残って練習やってたら、7時になっちまった!」


 バレー部の練習を終えた千智は、急いで職員室へと向かっていった。


「大会近いし、少しでも頑張りたいんだよな…早く体育館の鍵返さないとだし、急がないと!職員室からだとここから近いよな…」


大鏡の前の階段で、休み時間の時に話した噂を思い出し、少しだけ身震いをした。


「…あんなのただの噂だよな…関係ない。関係ない…」


 走って大鏡の前を通った時、突然手を掴まれた。


「…えっ?」


 その手はにあり、あっという間に千智を鏡に引きずり込まれてしまった。


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花桜の逢期─貴方との約束─ ことは @sakurakitsune36

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