第18話 力の兆し
昼休みになり、さくらは真菜実と千智と話していた。信也の席は空席だったため、千智が借りていた。
「さくらちゃん、小テスト残念だったね…」
「さくらが赤点なんていつものことだろ。あたしはギリギリだったけどな」
「ちさちゃん、ひどい!私は補習なのに…!」
「あたしは31点だから補習は免れたんだよ。赤点は30点以下だし。さくらは5点だったから頑張れよ」
「一緒に受けられると思ってたのに!裏切り者ー!」
「さくらちゃん、落ち着いて!補習頑張ってね」
真菜実に応援され、少しは落ち着く。
「…うん、まーちゃんは小テスト何点だったの?」
「私は82点だよ、難しかったからちょっと点数落ちちゃったけど…」
「ちょっとよかだいぶ難しかったぞ…」
「う、うん…まーちゃんすごいよ…」
「そんなことないよ」
真菜実は少し恥ずかしそうに言うが、さくらと千智には十分なダメージを与えた。
やがてチャイムが鳴り、生徒達は席に着き授業が始まった。
放課後、補習が終わりさくらはげっそりとした顔でいた。
「……やっーと、補習終わった…」
「さくら、どうしたそんな疲れた顔して」
「補習だよ!朝、言ったじゃん!こっちは大変だったんだから!」
「なんだよ、元気あるじゃねぇか」
「すっごい疲れた…」
(妖怪って本当、良いわよね!補習とかテストもないし!)
いつもの調子で言いながら、白火を恨めしく睨む。
「睨むなよ、オレは悪くねぇだろ!」
「白火にも補習の大変さが分かってほしいもん!」
「あいにくオレは妖怪だから、人には姿は見えないぜ」
「もー!羨ましい!変わってよ!」
「ぜってーやだ」
放課後、誰もいない廊下で騒いでると白火の動きがピタリと止まる。
「ねぇ、白火どうしたの?」
「…夜行の奴がいるかもしれねぇ、なんとなくだが匂いがするぜ」
「えっ?昨日は来なかったんじゃないの?」
「とにかく学校から出るぞ」
白火はさくらの腕を引っ張り、廊下を走る。
「ちょっと…!腕痛い!」
「我慢しろ!夜行の奴が近くまで来てるんだ!
数珠もつけとけ!」
「えっ?う、うん!でも、数珠まだ鳴ってない…」
腕につけて言いかけた時、僅かだが数珠が鳴る。
「…チッ!近いのかよ!」
───パリンッ!!
走り出そうとした時に、勢いよく窓ガラスが割れ大きくなった古烏が飛び出す。
「巫女ノ生マレ変ワリ!殺ス!!」
こちらに飛んで来るのを、白火は飛びかかり
右手に白い火を出して殴り、古烏は床に落ちる。
「…あぶねぇな!さくら、大丈夫か?」
「う、うん!私は平気」
「こいつ、夜行の奴か…額に紋様があるな」
「夜行のって…もう、嫌すぎる!」
古烏は廊下の床に倒れ、暫く動かなかった。
「早いとこ倒すか。さっきの音で人が来るかもしれねぇし」
「気をつけてね!」
「心配すんな」
白火が近づいた時、古烏は弱々しく口を開く。
「…夜行様ニ妖力モラッタ…カラダ大キクシテモラッタ…
「あ?なに言ったんだ?」
──なんだろう、この感じ…胸がざわざわして嫌な感じがする。白火に言わなくちゃ!
なんとなくだが、そんな感じをして呼び掛ける。
「…白火、危ない!なんか、嫌な感じがする!」
「嫌な感じ?」
白火がさくらの方に振り向いた瞬間、さっきまでは教室のドアくらいの大きさだったが、天井につくまでの大きさへと変化し、甲高い鳴き声を上げる。
「…ぐっ!!」
「…鼓膜が…破れそう!」
耳が塞ぎ、身動きが取れなくなる。
「……クッソ!耳が痛てぇ!」
「マズハ邪魔ナオ前カラダ!」
古烏が白火の方にめがけて鋭い嘴を向けて飛びかかる。
「白火!!」
──お願い!白火を助けたいの!!間に合って!
気がついたら私は無我夢中で走りだし、古烏の体に触れていた。
数珠をつけた左手を触れた瞬間、鈴が鳴り古烏が苦しみだした。
「ギャアッ!!」
悲鳴を上げた時、古烏の体が縮み襲ってきた時の教室のドアくらいの大きさへとなり、苦しみ悶えたいた。
「…さくら、何したんだ…?」
何が起きたか分からず、白火が驚いた顔で私を見る。
「……分かんない。白火を助けなきゃなって思ったから…助かって良かった!」
「…よく分かんねぇけど、ありがとうな。早いとこあいつを倒してくる」
さくらは笑顔を向けながら言い、白火は右手に火を出しながら走りだし、古烏に止めをさす。
「さっきの仕返しだぜ!!」
勢いよく殴り、白い火に包まれ古烏は消えて行く。
「やったね、白火!」
「おうよ!さくら、なあ、さっきの力…もしかして春子の…浄化の力に目覚めたのか?古烏が弱り出したからもしかしてそう思ったんだ」
「え?私にもよく分かんないよ?春子さんの力とかなの?白火が助かって良かったじゃん!」
廊下の方から騒がしい声が聞こえ、2人はその場を去ることする。
「さっきので人が来るから帰るぞ!」
「うん!あっ窓どうしよう!ガラス割れて危ないし…」
「そんなの気にしてる場合か!なんて言い訳すんだよ!」
「うーんと…今考える!」
古烏は白火の火で燃えて姿はないが、窓が割れた状態を見られれば、何かあったのかと疑われ、言い訳に苦しむ。
(妖怪が来たなんて言っても信てくれないしな…)
「えーと…烏が襲ってきたとか?急に突っ込んできたとか!」
「そんなんで信じてくれるわけないだろ、馬鹿」
「馬鹿って何よ!!少しは考えて!」
「でかい声出すなよ!見つかるだろが!」
白火に強引に腕を引っ張られ、さくらはブーブー文句を言う。
遠回りをして、上手く他の生徒には見つからずに帰れた。
その頃、人気のない廊下で、一部始終を見ていた信也が顔を出す。
古烏の妖気を辿りついたら、先に2人が接触していたため、様子を見ていた。
「今回は俺の手は必要なかったな。ほんの一瞬感じたが、新山のあの力…春子の力か」
廊下から、先生や生徒達が集まる声が聞こえ、信也も気配を消してその場を去った。
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