第12話 影の正体
「…え?影里くんどういうこと?」
信也の言った言葉に戸惑い困惑する。
「おい、なんでだよ!?オレ達仲間だろ!」
「俺が言った言葉が分からなかったのか?お前達とは仲間になる気もない。今の2人だと足手まといだ」
なお冷たく言い放ち踵を返そうとした時、数珠の鈴が鳴る。
「なんでまた鈴が鳴ったの?さっき影里くんがやっつけてくれたじゃない…!」
鈴が鳴った音に白火と信也は気づき警戒し、反対側の廊下の階段からさっきと同じ生首が2体近づいてくるのが見えた。
「いたわ!あの娘!」
「我らの仲間を葬った罪は重いわよ、おもい知りなさい!!」
1体目の生首の髪が伸び、さくらを巻きつけようとしたが、白火が髪を掴み妖術で燃やす。
「こいつらまだいたのか!しつけぇな。今はそれどころじゃねぇんだよ!」
「あああああ!!わたしの髪が!!」
白火は髪を掴んだまま妖術の火の火力を上げ、生首は消えていった。
「…おのれ、調子に乗るなよ」
最後に残った生首が目を血走りながら、さくらに噛みつこうとする。
「きゃあ!」
さくらが悲鳴を上げた時、生首の動きが止まる。目を開けたら、生首は黒い影のようなものに巻きつかれ動けなくなっていた。
「…何をする!離せ!この娘を殺すのがあの方のご命令…!!」
──あの黒い影みたいなのって…もしかして、昨日みたものと同じ!
「まさか…影里くんが昨日助けてくれたの!?」
信也の左手には影のようなものが出て、それは生首を巻きつけていた。
さくらの返事には返答せず、左手で生首の髪を掴み影で締め上げる。
「聞きたいことがある。夜行はどんな奴だ」
「答えるわけないだろ、小僧が…!」
答える気がないと分かり、生首の口を影で塞ぎ、刀で切りつけ消えていった。
あたりは何事もなかったかのように静かになる。
「…すっすごい!やっぱり昨日の影みたいなのって影里くんだよね!
さくらの方に向き、少しめんどくさそうに答える。
「…そうだ」
「そうだったんだね、ありがとう!白火が言っていたのって影里くんのことだよね?」
「そうだぜ。あの影で分かってたんだ。信也の妖術は影だからな」
「影里くんの妖術って影なんだ!…ところで妖術って何?」
白火に「そこからかよ!」とつっこまれ説明する。
「簡単に言えば、妖怪が使う力みたいなもんだな。オレだったら火、信也は影だしな」
「へぇーなるほど!すっーごい!!
だから、白火の火は白なの?ねぇ、影里くんの影の妖術はどんな風に使えるの?いいなー!私も妖術とか使ってみたい!!」
(妖術使えたらかっこいいし、学校とかも楽できるかも!)
自分が妖術を使った姿を想像して目を輝かせ、にやける。
「人間の新山は使えないし諦めろ。妖術だって簡単に扱えるものじゃない…どうせ使えたら凄いとかそんなふうに思ってるだろ。甘く見るな」
「えー!そんなあ…!使えたら自慢できるのに!」
思ってることを言われてしまい、少しがっかりする。
「さくらだったらそう考えそうだな…妖術は簡単なもんじゃねぇんだよ。それより、さっきの夜行の奴らたいしたことなかったな。このままオレ達で夜行倒せるんじゃねぇのか?」
「昨日、化け犬に苦戦してた癖によくそんなことが言えるな。下手したら新山だって危なかったんだぞ」
「でも、影里くんが助けてくれてから良かったじゃない!私は無事なんだし!」
冷めきった目で2人を見る。
「あの場で俺が手助けをしなかったら新山は化け犬に食い殺されていたかもしれないだろ。それにお前の攻撃は隙があるし無駄が多い。新山だっていつ前世の力が目覚めるか分からない。そんな悠長に待ってる時間はない」
「で、でも…!一緒に協力しようよ!そのうち力が目覚めるかもだし…!こうして会えたんだから!」
「そうだぜ!お前1人で夜行を倒せるわけないだろ!」
「俺は任務で来ただけで仲良くするつもりもない。最初からお前達の事なんか当てにはしてない。もう関わるな」
そう言い残し、信也は踵を返す。
「なんで…影里くん…」
廊下にはさくらと白火が残された。
──学校から帰り、家に帰った後、制服から着替え終わりさくらはベッドに寝転がる。
「…影里くん、協力してくれてもいいじゃない…!せっかく会えたのに!!あーもう!どうしたらいいの!」
ジタバタとしていたら白火が部屋に入る。
「何してんだよ、さくら。仕方ねぇだろ。信也の奴はああ言ってんだし…あいつ昔から頑固ところあるからな」
「…このまま諦めるの?やだよ、そんなの!」
「そうじゃねぇよ。オレに考えがある」
ベッドに座り、さくらに近寄る。白火はニヤッと笑い得意気に話し始める。
「なになに?どんなの!?」
「ようは認めさせればいいんだ。信也が夜行の奴らを倒す前に先にオレ達でやっつけちまえばいいんだ!そしたら、できる奴だって認めてくれるかもしれねぇし!」
「な、なるほど…!私達で先に夜行の手下をやっつけちゃえばいいんだ!」
白火の作戦に期待を膨らませ、勢いよく頷く。
「いい作戦だろ?そしたら、信也も仲間になってくれるかもしれねぇしな!」
「あっ!でも、私、まだ前世の力?とか使えないよ!そういえば春子さんの力って何…?」
「なんだ、まだ知らなかったのか?春子の力はな…」
会話の途中で、母から夕飯の呼び声が聞こえる。
「ごめん、白火!夕飯呼ばれたから行って来る!戻ったら続き聞かせて!」
「おう、行ってこいよ」
さくらは慌ただしく、階段を下りていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます