第11話 久しぶりの再会

 昼休みになり、信也に校内案内をしようと声をかける。


「ねぇ、影里くん!先生に言われてた校内案内するけどいいかな?」


 読書をしていて、さくらを一瞥しただけであったが頷いた。


「…分かった」

「やったー!じゃあ、一緒に行こう!」


 てっきり断られると思ったが、思いがけず嬉しくなる。




「ここが音楽室!2階の案内終わったー!」


 音楽室を通りすぎ、三階へ階段を上がり踊り場の方に行き、2人は窓辺によりかかり休憩する。


「ちょっと休もう影里くん!後は図書室と美術室の案内だけだね!ここから…」

「どちらも知ってる。俺達の教室と同じ階だから分かる」

 

 ちらりとさくらの方を見て話す。


「えっ!知ってたの!?」

「休み時間の時、校内を見て周ったからだいたいは把握したしもう案内は必要はない。人がいないタイミングを見計らってただけだ」

「そうだったの!早く言ってくれればいいのに!」


 (さっすが影里くん!頭いいし凄い!!)


「それに俺にがあるんだろ。ここなら人通りもないし」

「うん、そう!…って分かってたの!?」

「表情と態度を見ればすぐ分かる。新山、授業中も落ち着きなかったし」

「私ってそんなに分かりやすい!?」


 恥ずかしくなり顔が赤くなる。


「ああ。新山が聞きたいことは…」


 信也が言いかけた時、白火が階段を上がってきて2人に気づき手を振る。


「おーい!!さくら!信也!」

「…チッ、うるさいのが来たか…」


 白火の声を、嫌な顔をしながら舌打ちをし、聞こえないように呟く。


「白火、今までどこ行ってたの!?」

「色々見てたんだよ、別にいいだろ。信也、久しぶりだな!!」

 

 白火は信也の肩を組み笑顔になる。


「…えっ?えっ!?白火と影里くんって知り合い!?白火ってずっと祠にいたんだよね?なんで!?」

「オレと信也は昔からの友達なんだぜ!!春子にも会ったことあるしな!信也は妖怪なんだ!」

「…あれは、お前が無理矢理連れていったからだろ。それと妖狐ようことは友達じゃない。お前が来ると話がややこしくなる」 


 信也は鬱陶しそうに白火の手を払いのけ、さくらは驚いて少し大きな声を出す。


「妖狐って白火のこと?影里くん、春子さんに会ったことがあるの!?それに2人が友達?影里くんが妖怪!?」

「…余計な事言いやがって。俺は人間じゃないだ。友達って言うのやめてくれ。不愉快だ。俺はこいつをそんなふうには思ってない。昔から馴れ馴れしくて鬱陶しいから嫌いだ。だから名前で呼びたくない」


 白火を睨み、声を潜めて話を続ける。


「おい、久しぶりに会えたのにそんな言い方ねぇだろ!!なんでここに来たんだよ?オレ達と同じ夜行を倒すためか?」

「俺はでここへ来た。に頼まれて。目的は2人と同じだ」

「任務…?よく分かんないけど、影里くんも一緒に戦ってくれるの!?影里くんを見た時にね、数珠が鳴ったの。春子さんと一緒にいた記憶も流れ出したし…それに影里くんもいたような気がするの!何か知ってるなら教えて!」


 目を輝かせて、信也の答えを待つ。


「小さい頃、俺は春子と。その時の記憶だろ。新山が春子の生まれ変わりだって知ってる。一目見て分かった」

「さすがだな、信也。もう分かってたのか!」

「春子とはあまり似てないけど、髪と目が同じ色だし少しだが春子の霊力を感じる。それに同じ髪紐と数珠をつけていたからな」


 (影里くんを見て懐かしいって思ったのは前世で会ったからなんだ!)


「私が春子さんの生まれ変わりだって分かってたの!じゃあってどういうこと…!?」


 聞こうとした時、予鈴が鳴ってしまった。


「…後で言う」


 短く返事をした後、3人は教室へ戻った。




 午後の授業中、さくらは集中できていなかった。


 影里くん、なんで仲良くしてくれないんだろう?夜行倒すために来たんだから協力してくれてもいいじゃない!ケチ!白火の事が嫌いだから?前世の事も気になるし色々聞きたいのに!!


 そう思いながら頭を悩ませ、授業を聞き流していた。



 ──放課後、日直の日誌を急いで職員室へ届けて、2人は人気のない廊下にいた信也に声をかける。


「影里くん!!待って!」


 さくらは息を切らせ、信也は後ろへ振り向く。


「信也、まだ帰るなよ!」


 信也は2人の声に気付き振り向く。


「ねぇ、仲良くする気はないって…」


 その時、後ろから不気味な声が聞こえた。


「見つけた、巫女の生まれ変わり!」

「あの方の望むままに」


 廊下の端から2体の女の生首が見え、こちらに気づきニヤリと笑う。黒髪で長く額には夜行の紋様があった。


「…こいつらか、さっきから妖気を感じていたのは」


 生首達が近づいた時、信也の身体が影に覆われ、一瞬で服装が制服から黒い着物姿へと変化する。

上に着物の中に黒いシャツが見え、黒いズボンに帯に刀を差し、両腕と両足には包帯が巻かれてあり、草履を履いた姿へとなった。


「か、影里くん!……その格好!」



 数珠の鈴が鳴り、再び記憶を思い出す。


 ──私、影里くんを知っている…!あの格好見覚えがある。ずっと昔に…会ったことがある!



 信也は走りだし、生首2体を素早く刀で切りつける。生首は消え、あまりの早さにさくらと白火は驚き立ち尽くしていた。


「…夜行の情報は聞けなかったな」


 呟いた後、2人の方へ戻り冷たく言い放つ。


「お前達だと足手まといだ。目的は同じでも一緒には協力するつもりもない。俺だけでも夜行は倒す」


 





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